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2026/06/14
賃金・労働時間

36協定を締結できない管理監督者とはどのような人のことをいうのでしょうか。





 企業において時間外労働や休日労働を行わせるためには、いわゆる36(サブロク)協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。この36協定は、使用者と労働者の代表者との間で締結される労使協定ですが、その際にしばしば問題となるのが、管理職も労働者代表になれるのかという点です。




 労働基準法では、法定労働時間を超える労働や法定休日労働を原則として禁止していますが、使用者が労働者側と36協定を締結し、所轄労働基準監督署長へ届け出た場合には、その範囲内で時間外労働や休日労働を命じることが可能になります。この協定を締結する労働者側の当事者は、労働組合が存在する場合にはその労働組合となりますが、過半数労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)がなります。この過半数代表者について、労働基準法施行規則第6条の2第1項は、「監督又は管理の地位にある者でないこと」を要件としていることから、管理監督者は過半数代表者になることができず、36協定の締結当事者にもなれません。その理由は、労使協定が本来、労働者側と使用者側の対等な交渉によって成立すべきものだからです。管理監督者は企業経営の立場に近く、人事権や労務管理権限を有しています。そのような立場の人が労働者代表となれば、実質的には使用者が自らと協定を締結するのと同じ状態になりかねません。そこで法令は、使用者の利益を代表する立場にある者を労働者代表から排除し、労働者の意思が適切に反映されるようにしているのです。




 このような趣旨から、36協定の締結場面で当事者となれない管理監督者とは、単に管理者という肩書を有する人ではなく、実態的に使用者側の立場に立って労務管理・監督を行っている者のことをいいます。厚労省の通達でも、「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体の立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべし」とされていて、かかる解釈を踏襲する裁判所においても、主に次のような要素を総合的に考慮して管理監督者性の判断を行っています。


1.事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること。

労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経
営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、管理監督者とは言えません(引用元:厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」)。



2.勤務時間について大きな裁量を有していること

管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働
者と異なる立場にある必要があります(引用元:同上)。出退勤時刻が厳格に管理され、一般従業員と同様の勤務実態である場合には、管理監督者とは認められにくくなります。


3.その地位にふさわしい待遇を受けていること

管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労
働者と比較して相応の待遇がなされていなければなりません(引用元:同上)。役職手当がわずかしか支給されていない場合や、一般社員と比較して待遇面で大きな差がない場合には、管理監督者性が否定される傾向があります。






 36協定の締結において注意すべきなのは、過半数代表者の選出手続です。実際のところ、総務部長や人事部長が当然のように労働者代表として署名しているケースも見受けられますが、その人物が使用者側の利益を代表するような立場にある場合には、過半数代表者としての適格性に疑問が生じえます。単なる課長や係長という肩書に過ぎなくても、人事権や労務管理権限を有している場合には管理監督者と判断される可能性もあるでしょう。





 仮に、管理監督者が過半数代表者となって36協定を締結していた場合、その協定の有効性が問題となり、会社は時間外労働に関する労働基準法違反を指摘されるリスクがあります。あくまでも、会社が管理職として扱っているかではなく、その人が使用者側の立場に立って労務管理を行っているかという観点から検討する必要があります。単に後輩を指導しているだけの主任や係長、権限の限定された課長などは管理監督者には該当しません。管理監督者に該当するか否かを判断する際には、決して役職名のみで判断するのではなく、権限、裁量、待遇、勤務実態などを総合的に確認するように注意しましょう。


リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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