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2024年6月、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、従来の技能実習制度に代わる新たな外国人受入れ制度として「育成就労制度」が創設されました。技能実習制度とは制度目的そのものが異なり、外国人材の育成と人材確保を正面から位置付けた大規模な制度改革となっています。関連する企業の人事担当者や経営者にとっては、外国人雇用の考え方を根本から見直す必要があるかもしれません。
前身となった技能実習制度は、1993年に創設され、開発途上地域等への技能移転による国際貢献を目的として運用されてきました。しかし、実際には、多くの企業が人手不足への対応策として技能実習生を受け入れており、制度目的と実態との間に大きな乖離が生じていました。また、①低賃金労働の温床になっていたこと、②転籍(勤務先変更)が原則認められないこと、③実習生の失踪が多発していたこと、④監理団体による不適切な運営など、多くの課題もありました。2023年に公表された政府有識者会議の最終報告書では、技能実習制度について制度目的と実態が乖離していると評価され、制度の抜本的な見直しが提言された結果として誕生したのがこの育成就労制度になります。
育成就労制度の目的は、「人材育成」と「人材確保」とされています。育成就労法では、外国人を一定期間受け入れ、就労を通じて特定技能1号水準の技能を習得させることが制度の中心に据えられていて、従来の技能実習制度のような国際貢献が主目的ではなく、日本国内の人材不足への対応が制度上も明確に位置付けられた点が最大の特徴です。外国人は育成就労の在留資格で来日し、原則3年間就労します。その間に技能と日本語能力を習得し、最終的には特定技能1号への移行を目指します。つまり、育成就労制度は単独で完結する制度ではなく、特定技能制度への入口として設計されています。
従来の技能実習制度は90を超える職種・作業に細分化されていましたが、育成就労制度では特定技能制度との連続性が重視されています。2026年6月現在、特定技能制度は19分野に拡大されていて、育成就労制度については、このうち自動車運送業と航空を除く以下の17分野を対象として制度設計が進められています。
介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、物流倉庫、資源循環
育成就労制度における大きな改革の一つが転籍制度です。技能実習制度では、実習先の倒産や重大な法令違反など例外的な場合を除き、勤務先を変更することは認められていませんでした。しかし育成就労制度では、一定期間の就労実績や技能水準、日本語能力などの条件が設けられていますが、育成目的が損なわれない範囲で本人の希望による転籍が認められています。そのため、待遇や職場環境が悪い企業から、より条件の良い企業へ人材が移動することも起こりえるでしょう。貴重な人材の流出を防ぐため、企業には、適正な賃金水準の確保、日本語教育の実施、相談体制の整備、ハラスメント防止措置、キャリア形成支援、生活支援の充実といった取組がこれまで以上に求められます。実際、優良な受入れ機関については受入れ人数枠の拡大などの優遇措置が予定されています。評価項目には技能習得実績、日本語教育、法令遵守状況、外国人支援体制などが含まれており、企業の受入れ体制そのものが問われる時代になりそうです。
この育成就労制度を理解するうえで最も重要なのは、特定技能制度との接続です。従来の技能実習制度は、建前上は帰国を前提としていましたが、育成就労制度は、特定技能1号への移行を制度設計の中心に据えています。つまり、政府は、外国人材を一時的な労働力として扱うのではなく、中長期的な労働力として受け入れる方向へ政策を転換したともいえます。企業にとっても、外国人材を安価な労働力として捉える発想はもはや通用しません。今後は、教育、待遇、職場環境を整備し、日本人労働者だけでなく、外国人労働者からも選ばれる企業になることが人材確保の鍵となりそうです。
リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹