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2026/07/14
休職関連

適応障害での休職からの復職を会社に拒否された場合、会社と争える余地はあるのでしょうか。






 適応障害などの精神疾患の影響により休職した従業員が、主治医から復職可能と診断されたにもかかわらず、会社から復職を認めてもらえない。本人としては働く意思も能力も回復したと考えているにもかかわらず、会社からはまだ十分に回復していない、再発の可能性が高い、元の仕事は任せられないなどの理由で復職を拒否される。このような場合、会社の判断だから仕方がないと考えてしまう方もいますが、復職拒否に合理的な理由がない場合には、その後の自然退職や解雇の有効性を争う余地はあります。



 そもそも、休職制度そのものは労働基準法で定められた制度ではなく、会社の就業規則等に基づいて運用されている制度です。そのため、復職の要件や判定方法も、原則として就業規則や休職規程に従って判断されます。就業規則に基づいて判断するからといっても、その判断を自由に行えるわけではありません。労働契約法3条は、労働契約上の権利義務について信義誠実の原則を定めていて、同法16条は、解雇について客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には無効であると規定しています。したがって、復職を認めない判断がそのまま休職期間満了による退職や解雇につながる場合には、その前提となる復職拒否の合理性が争われることになります。





 復職可能性は、従前の職務を通常の程度に遂行できる状態に回復したかという点を基本に判断されます。ただ、企業の規模や人事制度によっては、配置転換が予定されている会社もあり、そのような会社では、元の部署だけでなく、現実的に配置可能な他部署で就労できるのであれば、復職を認めるべき場合があるともされています。本件のように適応障害での休職の場合、身体疾患とは異なり、特定の職場環境や人間関係などのストレス要因に反応して発症する精神疾患であるという特徴から、ストレス要因から離れることで症状が改善することも少なくありません。そのため、現在の部署では復職が難しいが、別部署であれば勤務できるというケースも実際には多く見られます。




 会社が一切配置転換を検討せず、元の部署で働けない以上、復職できないと形式的に判断した場合には、その判断が合理性を欠くと評価されるリスクもあります。一方で、会社が無理に復職させて症状を悪化させたりすると、逆に会社の安全配慮義務違反を問われる可能性もあり、会社が慎重な姿勢を取ること自体はやむを得ない面もあります。しかし、産業医が復職可能と判断し、主治医も同様の意見を述べているにもかかわらず、会社が医学的根拠を示さず、精神疾患だから不安であるという抽象的理由のみで復職を認めないのであれば、その判断は合理性を欠いていると判断される可能性が高いでしょう。会社としては、実際の業務内容や勤務時間、残業の有無、通勤時間、職場環境などを踏まえ、復職可能性を個別具体的に判断することが求められています。




 最近では、厚生労働省が公開している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」において、主治医・産業医・人事担当者・上司・本人が十分な情報共有を行い、段階的な復職支援を進めることが推奨されていることから、いわゆるリワーク(復職支援プログラム、職場復帰支援プログラム)や試し出勤制度を活用しながら、無理のない復職を目指すことが望ましいとされています。この指針は法的拘束力を持つものではありませんが、裁判においては、会社の対応が適切であったかを判断する際の参考資料として扱われることもあります。





 ご相談者様のケースのように、会社が復職を拒否した結果、休職期間満了による自然退職や解雇となった場合、その有効性を裁判で争うことは可能ではあります。その場合、主治医の診断書、産業医の意見書、就業規則、休職規程、会社とのメールや面談記録、勤務実績、リワークへの参加状況など、できるだけ多くの資料を証拠として提出することが望まれます。それらの証拠を基に、復職可能性や会社の判断過程を総合的に評価した上で、退職や解雇が有効かどうかが判断されることになります。実際のところ、配置転換、短時間勤務、時差出勤、段階的な業務負荷の調整など、双方が歩み寄ることで円満な解決に至るケースも少なくありませんが、適応障害は外見からは回復状況が分かりにくく医学的評価と職場での就労能力が必ずしも一致しないため、復職判断は大変難しいです。会社にも慎重な対応が求められますが、労働者自身も自らの就労能力を客観的な資料によって示すことが必要となるため、体調のすぐれない求職者が休職期間満了後の自然退職や解雇を争うことは大変負担が大きいことは否定できません。


令和8年7月13日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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