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冬場を中心に流行するインフルエンザは、通勤電車のような密閉・密集空間で感染するリスクが高いといわれています。では、通勤途中の電車内で他人からインフルエンザをうつされた場合、それは労災保険の補償対象になるのでしょうか。
通常、労働者が仕事に関連して負傷や疾病を負った場合、「労働者災害補償保険法」(いわゆる労災保険)に基づき補償を受けることができます。大きく分けて「業務災害」と「通勤災害」の2つがあり、今回問題となるのは後者です。この通勤災害については、「労働者災害補償保険法第7条第2項」において、「通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」と定義されています。また、「通勤」とは同条により「合理的な経路および方法による移動」とされています。本件での問題は「インフルエンザのような感染症」がこの「通勤による疾病」に該当するかどうかです。
通勤災害として認められるためには、一般に以下の要件が必要とされています。
ここで重要なのは、2つ目の「因果関係」です。単に通勤中に発症しただけでは足りず、「通勤によって疾病が発生した」と評価できる必要がありますが、インフルエンザのような日常生活でも広く感染機会がある疾病については、原則として通勤との因果関係を認めることが困難とされています。これは、感染経路を特定することが極めて難しく、「通勤中に感染した」と医学的・客観的に立証できないためです。
一方で、医療従事者が患者から感染した場合などは、業務との因果関係が明確であるため労災と認められるケースはあります。この場合、通勤災害ではなく業務災害として労災認定を受けており、本件のように通勤災害に関しては、一般的な感染症について労災と認められる例は極めて限定的です。例外的に認められる可能性があるのは、例えば以下のような場合が考えられますが、現実にはこうした立証は非常に難しく、実務上はほぼ認定されないのが実情です。
今回のように通勤中にインフルエンザに感染したと考えられる場合でも、労災認定が難しい以上、通常は以下の対応となります。
会社によってはインフルエンザによる出勤停止期間について特別休暇を設けている場合もありますが、これはあくまで企業の制度によるものであり、労災とは別の枠組みです。
結論としては、通勤電車内でインフルエンザに感染したとしても、現行の労災制度の下では、通勤災害として補償を受けることは難しいということになります。これは、インフルエンザが日常生活の中でも広く感染し得る疾病であり、通勤との因果関係を特定できないためです。もっとも、感染症リスクが高い現代においては、企業側も柔軟な休暇制度や在宅勤務制度を整備することが重要です。労働者としても、労災に該当しない場合の補償手段(健康保険や会社制度)を理解しておく必要があるでしょう。