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昨今、親が子どもの日常生活を撮影し、YouTubeに公開することで広告収入を得る、いわゆるファミリーYouTuberのチャンネルが収益化禁止になったというニュースが話題になっています。個人的にも気になったので、今回は、ファミリーYouTuberの活動に関し、法律の観点から問題になるようなことはないのか、少し考えてみたいと思います。
まず考えられるのが、労働基準法による規制です。同法56条は、原則として、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、児童を労働者として使用することを禁止していますが、同法116条2項は、同居の親族のみを使用する事業について、労働基準法の適用を除外しています。そのため、親が同居する子どもを自らのYouTube動画に出演させているに過ぎない場合には、児童労働の禁止規定が適用されません。そもそも、労働契約法6条は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者が賃金を支払うことについての合意を労働契約成立の要件としていますので、親が動画から広告収入を得ているとしても、子供が賃金を受け取っていない限り、親子間で労働契約は成立しません。
民法上、契約の成立に必ずしも報酬は必要とされていないので、労働契約が成立しないからといって、親子間に契約関係が存在しない訳ではありません。親が子どもに動画への出演を求め、子どもが承諾した場合、無償の出演契約という無名契約が成立する余地があります。ただし、親の指示に従って撮影に参加したというだけで、法的拘束力のある契約が成立する訳でもなく、単なる家族内の協力と、法的な出演義務を引き受ける合意とは区別する必要があります。
仮に、12歳の子どもとの間で無償の出演契約が成立するとして、その契約は有効なのかという問題もあります。問題になるのが利益相反行為について定めた民法826条で、同条は、親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、その子のために特別代理人の請求を家庭裁判所に請求しなければならないと定めています。親が自ら運営するYouTubeチャンネルに子どもを継続的に出演させ、広告収入はすべて親が取得する一方、子どもには報酬を支払わないという契約を考えてみると、この場合、親はできるだけ多くの動画に子どもを出演させることで収益を増やそうとする一方、子どもは出演による負担を負うことになり、親と子の利益が対立する構造が存在します。利益相反行為に該当するかは、法律行為の外形や客観的性質から判断されますので、親が広告収入を得ているというだけで、直ちに利益相反行為になるとはいえませんが、子どもが無償で継続的な出演義務を負い、親がその出演による経済的利益を取得するという内容が契約自体に定められている場合には、契約の客観的性質から利益相反行為に該当すると評価する余地はあるかもしれません。
利益相反の問題をクリアしたとしても、契約が当然に有効となる訳ではなく、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為に当たらないかも問題となります(民法90条)。例えば、親が12歳の子どもに毎日長時間の撮影を義務づけ、学校生活や友人関係に支障が生じても出演を続けさせ、本人が嫌がる私生活まで公開する契約を結んでいたとした場合、このような契約は、子どもの人格的利益や自由を著しく制約するものであり、公序良俗に反して無効となる可能性が高いでしょう。無償で出演していることや、親が収益を得ていることだけで契約が無効になる訳ではありませんが、出演の頻度や時間、子どもの意思、撮影内容、私生活への影響などの事情から、総合的に判断することになります。
ちなみに、出演契約が有効であったとしても、親が子どもに出演を法的に強制できるとは限りません。民法414条は、債務が履行されない場合の強制履行について定めていますが、契約上の義務であれば、どのような義務でも強制的に実現できるわけではありません。特に、本人の意思や人格と密接に関係する行為については、その性質上、直接的な履行強制が認められない場合があります。動画への出演は、単に一定の作業を行うだけなく、自分の容姿や言動、場合によっては私生活まで不特定多数の人々に公開する行為なので、こうした行為を本人の意思に反して強制することは、プライバシー権等の人格権に対する重大な制約となりえます。出演拒否を理由に親が広告収入の減少分を損害賠償として請求することも、公序良俗や権利濫用の観点から認められないでしょう。
そもそも、親権は親が自由に子どもを利用するための権利ではありません。民法820条は、親権者が子の利益のために監護及び教育をする権利を有し、義務を負うと定めていますので、親が自らの経済的利益を優先して子どもの意思を無視し、出演を強制するような行為は、親権の適切な行使とはいえません。出演の強制や動画の公開によって子どもの人格権、肖像権、プライバシー権が侵害された場合には、民法709条に基づく不法行為責任も問題となりえ、この場合、親子間に出演契約が成立しているかどうかは問題となりません。
令和8年11月3日
弁護士 石上秀樹