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ユニオン・ショップ協定とは、労働者が一定の労働組合に加入し、組合員資格を維持することを雇用継続の条件とする労使間の協定です。労働組合の組織を維持・強化することを目的としており、労働組合法7条1号ただし書も、一定の要件の下で、このような協定の締結を認めています。ただし、ユニオン・ショップ協定が存在するからといって、組合を脱退した従業員を当然に解雇できるわけではありません。労働契約法16条は、解雇について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利の濫用として無効になるとしていて、この規定は、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇にも適用されます。ただし、通常の解雇とユニオン・ショップ協定に基づく解雇とでは、合理性を判断する際の着眼点が異なります。
通常の解雇では、従業員の能力不足や勤務態度、企業秩序への影響などが問題になりますが、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇では、有効な協定によって会社に解雇義務が生じているかという点が重要になります。この点、判例(日本食塩製造事件)は、労働組合から除名された従業員に対する解雇について、協定に基づく解雇義務が発生している場合に限り、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものとして是認できると判断しています。この事件では、組合による除名処分の効力が問題となりましたが、裁判所は、除名が無効であれば会社に解雇義務は生じず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事情がない限り、解雇権の濫用として無効になるとしています。
もう一つ参考になる判例が、三井倉庫港運事件です。この事件は、従業員がユニオン・ショップ協定を締結している組合を脱退し、別の労働組合に加入したところ、会社が協定に基づいて解雇したという事案で、最高裁は、労働者には自らの団結権を行使するために労働組合を選択する自由があり、協定締結組合だけでなく、他の労働組合の団結権も尊重されなければならないとした上で、別の労働組合に加入している従業員や、協定締結組合を脱退・除名された後に別の組合に加入した従業員について、会社に解雇義務を課す部分は、公序良俗に反して無効であるとしました。この考え方によると、従業員が組合を脱退した場合でも、別の組合に加入したのであれば、ユニオン・ショップ協定を根拠として解雇することは許されない(無効になる)ことになります。
組合から脱退したという報告を受けた会社としては、直ちに解雇するのではなく、まずは、協定が有効に成立しているか、当該従業員が協定の適用対象となっているか、実際に組合員資格を失っているか(除名が有効か)、また、別の組合に加入していないか、新たな組合を結成していないか等の事実関係を調査・確認することになります。協定の中には、組合員資格を失った従業員の解雇について、労使間の協議や一定の例外を認めるものもあるので(不完全ユニオン)、その場合には、協定の具体的な内容に従った対応も検討することになります。協定の適用対象であり、脱退も有効に成立しているのであれば、協定上の解雇義務を履行することが、解雇の合理性を基礎付けることになります。ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は、従業員の勤務成績などを理由とするものではなく、労使間の協定に基づく義務を履行するものなので、通常の解雇で問題となるような、従業員の能力不足や勤務態度の悪さ、会社の業務に生じた支障などを、改めて立証する必要はありません。
会社としては、組合との協定を守る必要がある一方、解雇が無効と判断された場合には、従業員に対する賃金支払義務などを負うリスクを負うことになるので、組合からの要求をそのまま受け入れるのではなく、会社自身で解雇義務の有無を慎重に検討することが重要です。会社に解雇しない選択肢が認められているのであれば、完全ユニオン・ショップ協定の場合と異なり、協定によって解雇が義務付けられていたという説明だけでは足りない可能性もあります。この場合は、会社がなぜ解雇という選択をしたのかについて、解雇権濫用法理との関係で、より慎重な検討が必要になるとも考えられます。例外的に解雇を回避できる場合が限定されており、その例外に該当しないときには会社が解雇義務を負うという協定であれば、解雇の合理性が認められる余地は大きいでしょうし、逆に、会社に広範な裁量が認められている場合には、解雇を選択した理由や、同種事案における取扱いとの整合性などが問題になります。
令和8年10月20日
弁護士 石上秀樹