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2026/08/22
各種保険

精神障害による後遺障害について






 長時間労働や職場でのハラスメント、重大な仕事上のトラブルなどをきっかけとして、うつ病、適応障害、PTSDなどの精神障害を発症することがあります。こうした精神障害が業務による強い心理的負荷を原因とする場合、労働者災害補償保険法に基づく労災保険給付の対象となり、仕事や日常生活への支障が残った場合は、身体機能の障害同様、障害補償給付の対象となりえます。ただし、うつ病と診断されているから後遺障害になるという単純なものではなく、精神症状がどの程度残っているのか、それによって仕事や日常生活の能力がどの程度制限されているのかによって判断されることになります。







 精神障害の後遺障害を理解するうえで重要なのが、労災保険における「治ゆ」という考え方です。ここでいう治ゆというのは、病気が完全に治って健康な状態に戻ることだけを意味するのではなく、十分な治療を行っても症状の改善が見込めず、症状が固定している場合にも、医学的意見を踏まえて治ゆと判断されることがあります。治ゆの時点で精神症状が残り、それによって労働能力などに一定の障害が認められる場合には、後遺障害等級認定の問題になります。具体的な障害等級については、労働者災害補償保険法施行規則第14条および同規則別表第一「障害等級表」に定められていて、第1級から第14級まであり、障害の程度によって給付内容が異なります。第1級から第7級までは障害補償年金、第8級から第14級までは障害補償一時金が支給され、精神障害についても、この障害等級表における神経系統の機能又は精神の障害として評価されます。







 厚生労働省の「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」では、脳の器質的損傷を伴わない精神障害は非器質性精神障害とされていて、うつ病やPTSDなどはここに含まれます。この非器質性精神障害について後遺障害が認められるためには、単に精神疾患の診断名がついているだけでは足りず、抑うつ状態、不安の状態、意欲低下の状態、慢性化した幻覚・妄想性の状態、記憶または知的能力の障害、その他の障害といった精神症状のうち、一つ以上の症状が残っていることが求められます。それに加えて、能力に関する判断項目のうち一つ以上について障害が認められることも必要です。






神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準

 
脳の器質的損傷を伴わない精神障害(以下「非器質性精神障害」という。)については、以下の基準によること。

ア  非器質性精神障害の後遺障害
 非器質性精神障害の後遺障害が存しているというためには、以下の(ア)の精神症状のうち1つ以上の精神症状を残し、かつ、(イ)の能力に関する判断項目のうち1つ以上の能力について障害が認められることを要すること。
(ア) 精神症状
 (1)  抑うつ状態
 (2)  不安の状態
 (3)  意欲低下の状態
 (4)  慢性化した幻覚・妄想性の状態
 (5)  記憶又は知的能力の障害
 (6)  その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)

(イ) 能力に関する判断項目
 (1)  身辺日常生活
 (2)  仕事・生活に積極性・関心を持つこと
 (3)  通勤・勤務時間の遵守
 (4)  普通に作業を持続すること
 (5)  他人との意思伝達
 (6)  対人関係・協調性
 (7)  身辺の安全保持、危機の回避
 (8)  困難・失敗への対応



 
 非器質性精神障害の後遺障害は、原則として第9級、第12級、第14級の三段階で認定され、例えば第9級は、神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるものに当たる場合で、仕事をする能力がかなり制限されているものの、一定の就労は可能という状態が典型的です。第12級は局部にがん固な神経症状を残すもの、第14級は局部に神経症状を残すものという等級を準用して評価されます。精神障害は、骨折や関節障害のようにレントゲン写真を見れば障害の程度が分かるようなものではないので、以前できていた仕事のうち何ができなくなったのか、現在どのような職場の配慮を受けているのか、家庭生活でどの程度援助が必要なのかといった具体的な事実を整理しておくことが、適切な障害等級認定を受けるための重要なポイントになります。

令和8年8月22日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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