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2026/04/06
各種保険

私は個人事業主としてウーバーイーツの配達員をしています。自転車で幹線道路を走ることも多く事故に巻き込まれる心配をしているのですが、私のような立場でも労災保険に加入することはできるのでしょうか。




フードデリバリーサービスの普及に伴い、ウーバーイーツ配達員として働く方が急増しています。とりわけ都市部では、自転車で幹線道路を走行しながら配達を行う場面も多く、交通事故のリスクと隣り合わせの仕事といえます。そうした中で、「自分は個人事業主だが、労災保険のような補償は受けられるのか」という疑問を持つ方も少なくありません。





労災保険は、正式には労働者災害補償保険法に基づく制度であり、同法第3条において「労働者」に適用されるものと定められています。ここでいう労働者とは、会社や事業主の指揮命令のもとで働き、その対価として賃金を受け取る者を意味します。近年は、フリーランスを巡る法的保護の議論が活発化しており、裁判例においても「形式ではなく実態」に基づいて労働者性を判断する傾向が見られます。仮に指揮命令関係が強く認められる場合には、形式上、個人事業主とされていても労働者と評価される余地はあります。ただし、ウーバーイーツ配達員については、一般的には業務委託契約に基づいて働く「個人事業主」と位置付けられており、指揮命令を受ける会社等は存在しません。そのため、労働者には該当せず、通常の労災保険の適用対象外となるのが原則です。





もっとも、労働者でなければ一切保護されないというわけではありません。労働者災害補償保険法第33条は、一定の要件のもとで「特別加入制度」を認めており、中小事業主のように、本来の対象ではない個人事業主にも労災保険の適用を拡張しています。この制度は、業務の性質上、労働者と同様に災害リスクが高いと考えられる人々を救済するために設けられたものです。従来は建設業の一人親方などが主な対象でしたが、近年の働き方の多様化を受けて対象範囲が拡大され、フードデリバリー配達員のようなフリーランスも含まれるようになりました(労災法33条3号、労災則46条の171号)。すなわち、ウーバーイーツ配達員であっても、一定の手続きを経れば労災保険に加入する道が制度上用意されています




この特別加入制度は、通常の労働者としての加入とは異なる特徴を持っています。まず、個人が単独で直接加入することはできず、労働保険事務組合などの「特別加入団体」を通じて手続きを行う必要があります。この点は実務上の大きなハードルになり得ます。また、保険料は自己負担となります。労働者の場合には事業主が負担する保険料も、個人事業主の場合には自らが支払うことになります。保険料の額は、自ら設定する給付基礎日額に応じて決まる仕組みであり、補償の手厚さと負担額のバランスを検討する必要があります。


さらに重要なのは、事故が「業務に起因するもの」であるかどうかという点です。配達中の交通事故であれば業務災害と認められる可能性が高い一方で、業務と無関係な私的移動中の事故は対象外となります。アプリの稼働状況や配達指示との関係が判断に影響するため、日頃から業務の区別を意識しておくことが求められます。







ウーバーイーツ配達員のような個人事業主は、原則として労災保険の適用対象外ではあるものの、労働者災害補償保険法第33条に基づく特別加入制度を利用することで、一定の補償を受けることは可能です。交通事故のリスクが高い業務である以上、万が一の備えとして制度の活用を検討することには大きな意義があります。自己負担という側面はあるものの、事故による収入喪失や治療費の負担を考えれば、保険加入については検討の余地は十分にあります。労働者とは異なり個人事業主は守ってくれる雇い主が存在しません。自分の身は自分で守るしかない以上、制度の仕組みを正しく理解し、自身の働き方に応じたリスク管理を行うことが、これからの時代においてますます重要になります。

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