Column
コラム
  1. トップ
  2. コラム
  3. 歩合給部分のある従業員が有休をとったんですが、その場合に支払うべき賃金の計算方法が分からないので教えてほしいです。基本給は休んだ分は控除しています。
2026/08/21
賃金・労働時間

歩合給部分のある従業員が有休をとったんですが、その場合に支払うべき賃金の計算方法が分からないので教えてほしいです。基本給は休んだ分は控除しています。






 営業職や販売職など、基本給+歩合給という給与体系が採用されている職種があります。このような従業員が年次有給休暇を取得した場合、賃金をどのように計算すべきかよく分からないまま、なんとなく支払っているケースも実は多いのではないでしょうか。労働基準法39条9項は、有休を取得した期間について一定の賃金を支払うことを使用者に義務付けていて、年次有給休暇を取得した日の賃金については、大きく分けて、①平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、③健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額という3つの計算方法のうちどれかを採用するように規定しています。平均賃金と通常の賃金のどちらを採用するかについては、就業規則その他によってあらかじめ定めておくべきとされていて、標準報酬月額の30分の1を利用する方式には労使協定が必要となります。ですので、会社が有休のたびに、今回はこの方法が安いから平均賃金、次回はこちらと自由に選べるわけではありません。





 まずは、会社の就業規則や賃金規程をご確認いただき、そこに、年次有給休暇を取得した日は通常の賃金を支払うなどと定められているのであれば、その方式に従って計算することになります。通常の賃金とはなんなのかという疑問に答えてくれているのが、労働基準法施行規則25条で、ご質問にあるように、給与が基本給+歩合給で構成されている場合は、基本給についての有休賃金と歩合給についての有休賃金を分けて計算し、最後に足し合わせることになります(同条1項7号)。



 例えば、基本給が月額24万円で、その月の所定労働日数が20日だったとします。月給については、労働基準法施行規則25条1項4号により、月額をその月の所定労働日数で割って通常の賃金を計算します。


  この場合、24万円÷20日=1万2,000円です。



 ちなみに、有休を1日取得したことを理由として給与計算上いったん基本給から1万2,000円を控除するのであれば、有休取得日の賃金として基本給相当額1万2,000円を支給する必要があります。結果的には、基本給部分については通常の出勤日と同じことになるかもしれません。有休なので基本給を控除してはいけないというより、正確には、給与計算上控除する処理をすること自体は問題ないものの、有休の賃金を別途支給しなければならないと理解していただいたほうが分かりやすいかもしれません。



 基本給についてはそれほど悩まなくても、歩合給部分の計算については、実際、悩まれている方が多いです。この点、労働基準法施行規則25条1項6号は、出来高払制その他の請負制によって定められた賃金について、「その賃金算定期間の歩合給総額÷その期間の総労働時間数×その期間の1日平均所定労働時間数」で計算するように規定しています。例えば、1か月の歩合給が8万円、実際に働いた総労働時間が152時間、1日平均所定労働時間が8時間だったとして



 この場合、

   8万円÷152時間×8時間≒4,211円

 となります。

 

 歩合給は通常、売上や契約件数などの実績に応じて発生します。そのため、有休の日には売上を上げていないのだから、その日の歩合給は存在しないと考えたくなる気持ちはよく分かります。しかし、通常の賃金方式を採用している以上は、その日に実績があったかということは関係なく、あくまでも同法25条1項6号が規定している歩合給等についての計算方法に従うべきで、その方法で計算された有休賃金を実際に支払う必要があります。





 

 ここで、先ほどの数字を使って、基本給24万円、歩合給8万円、その月の所定労働日数20日、総労働時間152時間、1日平均所定労働時間8時間で、有休を1日取得したケースを考えてみましょう。会社が基本給について、休んだ日は日割り控除するという給与計算を行っているのであれば、基本給から1万2,000円をいったん控除します。しかし、有休ですから、基本給部分の有休賃金として1万2,000円を支給します。



 さらに、歩合給部分についても、


   8万円÷152時間×8時間≒4,211円


 を有休賃金として計算します。



 結果として、、給与明細上、基本給控除▲12,000円、有休賃金・基本給分+12,000円、有休賃金・歩合給分+4,211円というような処理をすることになります。基本給については、わざわざ控除と再支給を行わず、月給24万円をそのまま支給し、歩合給部分について必要な有休賃金だけを加算する方が給与計算上簡便ですし、実務上も、月給により算定した額が法定の有休賃金を上回る場合には、通常どおり出勤したものとして月給を支給することで足りるという取扱いがされているので問題ありません。労働基準法39条1項9項の趣旨は、有休を取得することによって労働者が賃金面で不利益を受けることを防ぎ、有休を実質的に保障することにあります。歩合給の比率が高い従業員について有休日の歩合相当額をまったく考慮しない運用は、この点からも問題があります。




 給与計算を見直す際には、就業規則の有休賃金に関する条項、基本給の欠勤控除の方法、歩合給の算定期間、総労働時間の集計方法まで一体として確認することが重要です。歩合給の割合が大きい会社では、有休取得者について歩合給相当の有休賃金を計算していないと、歩合給部分のある従業員ごとに未払いの賃金が積み重なっていくことになり、後から、対象となる全従業員の未払い分をまとめて請求されるリスクも負うことにもなります。人事・給与担当者としては、自社の運用が労働基準法39条9項と労働基準法施行規則25条が規定する内容に違反していないか、一度、点検しておくことをお勧めします(分からない場合はいつでもご相談ください)。


令和8年8月21日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

問い合わせ 矢印