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2026/08/20
賃金・労働時間

日によって勤務時間が異なるアルバイト社員が有給休暇をとったのですが、その場合に支払う給与はどのように計算したらよいのでしょうか






 前提として、年次有給休暇というのは、正社員だけを対象とする制度ではなく、アルバイトやパートタイマーであっても対象となります。短時間勤務のアルバイトについては、週所定労働日数などに応じて正社員と比べて年休の日数が少なくなる場合がありますが、アルバイトだから年休がないわけではありません。年休は、単に、出勤しなくても欠勤扱いにしないという制度ではなく、休暇を取得しながら一定の賃金を受け取ることができる制度です。悩みがちなのが、そもそもいくら支払ったらよいのか分からないというところですが、例えば、飲食店や小売店、サービス業などでは、月曜日は4時間、火曜日は6時間、土曜日は8時間といったように、日によって勤務時間が異なるアルバイト社員も少なくありません。このような社員が年休を取得した場合、会社はいくら給与を支払えばよいのでしょう。




 例えば、時給1,200円のアルバイト社員が、1日4時間から8時間程度勤務している場合において、有休を取得した日の勤務予定が4時間なら4,800円、8時間なら9,600円と単純に計算することになるのか、それとも、平均的な勤務時間を基に計算することになるのかという問題です。仮に、会社が年次有給休暇中の賃金について通常の賃金を支払う制度を採用しているのであれば、原則として、その有休取得日に予定されていた所定労働時間を基準として計算するのが正しいです。年休中の賃金については、法律上複数の計算方法が認められているため、まず会社の就業規則を確認してみましょう。




 年次有給休暇中の賃金について定めているのは、労働基準法39条9項です。同項では、年休期間中について、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金または所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金などを支払わなければならないとされています。労使協定を締結した場合には、健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する金額を基準とする方法も認められています。大きく分けると、①平均賃金による方法、②通常の賃金による方法、③標準報酬月額を基準とする方法の3種類があるということになります。平均賃金と通常の賃金のどちらを採用するかについては、就業規則その他によってあらかじめ定めておく必要があるとされていて、標準報酬月額を基準とする方法を採用する場合には、さらに労働者の過半数代表者等との書面による労使協定が必要となります。





 分かりやすいのは、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う方法です。この計算については、労働基準法施行規則第25条第1項が以下のようなルールを定めています。


労働基準法施行規則

第二十五条 法第三十九条第九項の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次に定める方法によつて算定した金額とする。
一 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
二 日によつて定められた賃金については、その金額
三 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額
四 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額
五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額
七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額





 時間給で働いている人の場合は、時間給の金額×その日の所定労働時間数が基本になります。例えば、時給1,200円のアルバイト社員について、すでに勤務シフトが確定しており、月曜日は4時間、火曜日は6時間、金曜日は8時間勤務することになっていたとします。この社員が月曜日に1日有休を取得したのであれば、1,200円×4時間=4,800円になります。金曜日に有休を取得したのであれば、1,200円×8時間=9,600円です。このように、日によって所定労働時間が異なっていても、その日の勤務時間があらかじめ決まっているのであれば、その有休取得日の所定労働時間を基準として計算するのが原則となります。要は、有休を取った日に、本来何時間働くことになっていたのかということです。





 注意が必要なのが、翌月のシフトがまだ作成されておらず、その日が勤務日になるのか休日になるのか自体が決まっていない場合です。そもそもシフト制というのは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務シフトなどによって初めて具体的な労働日や労働時間が確定する勤務形態のことをいいます。つまり、シフトが確定することによって初めて勤務日が決まる契約で、まだシフトが作成されていない段階では、特定の日について具体的な労働義務が設定されていないことになります。年次有給休暇は、本来存在する労働義務を免除する制度ですので、例えば、毎月25日に翌月の勤務日を初めて決めるという純粋なシフト制において、シフト作成前の20日に、労働者から来月10日を有休にしてくださいと申請があったとしても、来月10日がまだ勤務日と決まっていないのであれば、その日について免除すべき労働義務自体がないことになります。





 一方で、その日に働くこと自体は決まっているが、何時から何時まで働くのかがまだ決まっていないという場合もあるでしょう。例えば、雇用契約で毎週月曜日は勤務日と明確に定めているものの、月曜日の勤務時間については、4時間勤務になるか8時間勤務になるかを毎月のシフト表で決まるようなケースです。この場合、シフト表が完成していなくても、月曜日について労働義務そのものはすでに設定されていると考えられますので、まだ勤務日ではないから年休を取得する前提がないとは言えません。仮に、労働契約書や就業規則、シフト作成ルールにおいて、勤務日だけでなく、所定労働時間をどのように決定するかについても定められている場合は、その定めのとおり労働時間を算定することになりますが、実際のところ、そのような定めなどない場合が多いと思います。そうなると、会社と労働者が話し合って、何時間分の給与を払ってもらうという合意をするのかという話にもなりかねませんが、内容によっては合意の有効性が争われる余地もあり、シフトが決まる前に有給取得を認めるのはできるだけ避けるのが賢明です。労働基準法附則136条も、使用者に対し、年次有給休暇を取得した労働者について不利益な取扱いをしないよう求めています。




 
 就業規則で年休中の賃金を平均賃金によって支払うこととしている会社では、時給×その日の勤務予定時間という計算にはなりません。平均賃金は、労働基準法12条に基づいて計算し、原則として、算定すべき事由が発生した日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の暦日数で割って算出します。ただし、時給制や日給制などの場合には最低保障額のルールがあるため、単純に、3か月分の給与÷3か月間の日数にはならない場合があります。例えば、出勤日が少ないアルバイトについて暦日数だけで割ると平均賃金が極端に低くなることがあることから、労働基準法12条1項1号では、日給、時間給、出来高給などについて最低保障額を定めています。




 このように、日によって勤務時間が異なるアルバイト社員であっても、年次有給休暇の給与計算には法律上のルールがあります。労働基準法39条9項は、年休中の賃金について複数の計算方法を認めており、会社はあらかじめ採用する方法を定めておく必要があるとされています。仮に、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を採用している会社であれば、時間給×その日の所定労働時間で計算するのが基本となりますし、平均賃金によって支払うこととしている会社では、原則、算定すべき事由が発生した日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の暦日数で割って算出することになります。健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する金額を支払う旨の労使協定を締結している会社であれば、それに従って計算することになります。自社がどのようなルールを採用しているか、知らないまま運用しているようなケースも多いと思うので、一度、就業規則や労使協定を確認してみましょう。


令和8年8月20日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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