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2026/09/28
その他(労務関連)

従業員の雇用を決めるにあたり、前職をどのような形で辞めたのかの情報を得る必要性を痛感しています。情報を得るにあたって、注意すべきこと、得る方法等について教えてほしい




 中途採用の場面では、応募者が前職をどのような形で辞めたのかが、採否を判断するうえで重要な意味を持つことがあると思います。自己都合で円満に退職したのか、能力不足を指摘されて退職勧奨を受けたのか、それとも重大な非違行為によって懲戒解雇されたのか。同じ退職という履歴でも、その内容次第では会社側の評価が変わることは十分あり得ます。ご質問者様が心配されているように、採用判断に役立つ情報だから自由に調べてよいという訳ではありません。



 採用時の個人情報取得に関しては、職業安定法5条の5が重要となります。求人企業は、求職者の個人情報を収集する場合、原則として採用業務の目的達成に必要な範囲で、収集目的を明らかにしなければなりません。厚生労働省の指針も、本人から直接収集するか、本人の同意の下で本人以外の者から収集するなど、適法かつ公正な手段によることを求めていて、安全なのは、まず応募者本人に質問する方法です。その際、前職の退職理由を教えてくださいと尋ねるだけでなく、会社都合退職、退職勧奨、普通解雇、懲戒解雇に該当する事情があったか、退職に際して会社との間で紛争があったかなど、採用判断との関係で必要な事項を具体的に確認する方がよいでしょう。



 本人に質問するといっても、何でも聞けばよいというわけではありません。厚労省も、公正な採用選考の観点から、応募者の適性・能力と関係のない事項については把握しないよう求めています。家族、生活環境、思想・信条、労働組合への加入状況などを採用選考の過程で調査することには特に注意が必要です。前職の退職理由を確認する場合、今回採用する職務への適性や信頼性を判断するために何を確認する必要があるのかという発想から質問事項を設計することが求められています。



 問題なのが、応募者本人の説明だけでは信用できない場合です。その際に考えられるのが、本人の同意を得たうえで前職の会社に照会する、いわゆるリファレンスチェックです。厚生労働省の指針も、本人の同意の下で本人以外の者から個人情報を収集することを予定していますので、前職への照会それ自体が一律に禁止されているわけではありません。ただし、会社が応募者に知らせず、前職の人事担当者や元上司に電話して、この人はどういう辞め方をしましたか、何か問題を起こしていませんでしたかなどと、身元調査のような聞き方は避けるべきです。リファレンスチェックを行うのであれば、本人に対して、誰に、どのような目的で、どのような事項を確認するのかをできるだけ具体的に説明し、明確な同意を得ておくのが基本です。




 応募者が前の会社に聞いて構いませんと言ったからといって、前職の会社が何でも回答できるわけではありません。前職企業が保有する退職理由、人事評価、懲戒歴などは本人に関する情報になるので、個人情報保護法上、個人データを第三者に提供する場合には、原則として本人の同意が必要になります。そのため、応募者から、採用予定会社が前職企業に照会し、前職企業が一定の情報を採用予定会社に提供することまで含めた同意を明確に取得しておくことが望ましいです。同意が得られたからといってどんな情報の取得できるようになる訳ではなく、前職企業としても、後のトラブルを避けるため、在籍期間と役職だけ回答するというような対応をすることもあるでしょう。確認するのであれば、評価より事実を中心にすべきで、在籍期間は申告どおりか、担当業務は申告どおりか、退職は本人からの申出によるものか、懲戒解雇であったかなどといった確認です。



 あと重要なのが、採用時の質問を制度化しておくことです。ある応募者について何となく怪しいから詳しく調べ、別の応募者については何も確認しないという運用では、採用担当者によって判断がばらつきますし、応募者もなんで自分だけこんなに詳しく調べられるのかと不信感を抱くでしょう。中途採用者については前職の退職理由を共通の質問項目とし、一定の重要ポストについてのみ本人の同意を得てリファレンスチェックを行う、といった基準を設けることも有用です。ただし、いったん制度化してしまうと会社自身もそのルールに拘束されることになるので、外部への照会は職務の性質や責任の程度に応じて実施する、といった段階的な設計の方が望ましいかもしれません。


令和8年9月28日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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