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業務用として会社が貸与しているパソコンを、就業時間中に私的なメールやメッセージの送受信に利用する行為は、多くの企業で問題となっています。注意や指導を繰り返しても改善されない場合、懲戒処分を検討すること自体は自然な流れといえます。もっとも、どの程度の懲戒処分まで法的に許されるのかは慎重に判断する必要があります。
懲戒処分は、企業秩序を維持するために認められた制度ですが、使用者が自由に科すことができるわけではありません。日本の労働法では、懲戒処分について以下の二つの大原則が確立しています。
懲戒処分の一類型としての減給は、就業規則に定めがあれば選択可能です。ただし、減給には法定の上限があります。労働基準法第91条では、減給制裁について次のように定めています。
この上限を超える減給は、それだけで違法となります。
問題は、「私的メールの送受信」という行為が、減給という不利益処分を正当化するほど重いかという点です。
裁判例では、
といった事情を総合的に考慮しています。単発的・短時間の私的利用にとどまる場合、減給処分は「重すぎる」と判断されるリスクが高いといえます。
実務上、減給処分が比較的正当化されやすいのは、次のような場合です。
逆に、いきなり減給を行うことや、注意履歴を残していない状態での処分は、無効と判断されるリスクが高くなります。また、いきなり解雇については、私的利用のみを理由とする場合、労働契約法第16条(解雇権濫用法理)に照らし、ほぼ認められないと考えるべきです。
業務用パソコンの私的利用に対し、減給処分が常に許されるわけではありません。
重要なポイントは次のとおりです。
実務的には、まずは文書による注意・指導や業務命令の明確化を行い、それでも改善が見られない場合に、初めて減給などの懲戒処分を検討する流れが安全です。
懲戒は「処分すること」自体が目的ではなく、職場秩序を回復するための手段であることを意識した運用が求められます。