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2026/10/01
退職・解雇

弊社の業績が芳しくないので、パートタイマーや有期雇用の社員から解雇したいと考えているのですが、法的になにか問題はありますか




 業績悪化により人員削減が避けられなくなった場合において、まずはパートや有期契約社員を削減し、それでも足りなければ正社員を削減するという考え方は、一般的にはそれほど珍しいものではありません。正社員の方が雇用保障が強く、パートや有期社員の方が雇用調整しやすいというイメージがあるからでしょう。しかし、法律上はそれほど単純ではなく、特に有期社員を契約期間の途中で解雇する場合には、正社員よりもむしろ厳しい規制がかかることがあることに注意が必要です。


 

 期間の定めのない正社員などを解雇する場合には、労働契約法16条が適用され、解雇について、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を要求しています。経営上の理由による整理解雇については、この判断に際して、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、労働者への説明や協議など手続の妥当性という、いわゆる整理解雇の4要素が考慮されます。例えば20人を削減する必要があるとしても、単に正社員は残し、パートや契約社員から20人を選ぶとするのではなく、なぜその雇用区分を人選基準とする必要があるのかが問われます。店舗の閉鎖によって、その店舗で限定的に勤務していた短時間労働者の仕事そのものがなくなるのであれば、結果として短時間労働者が削減対象となることには合理的な理由は認められやすいでしょう。これに対し、正社員と有期社員が同じ製造ラインで同じ仕事をし、能力や配置転換可能性にも大きな違いがないにもかかわらず、正社員の雇用を守るためというだけで有期社員のみを対象とすれば、人選の合理性について争われる可能性があります。



 注意が必要なのが、有期社員を契約期間の途中で解雇する場合です。この場合には労働契約法16条ではなく17条1項が適用され、使用者はやむを得ない事由がなければ、契約期間が満了するまで労働者を解雇することができません。16条が、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を求めるのに対し、17条はやむを得ない事由を求めていて、このやむを得ない事由は、16条による通常の解雇よりも厳格な基準と解されています。というのも、有期契約では、会社自身がこの日までは雇用すると約束しているにもかかわらずその約束を途中で打ち切る以上、単に経営上人員を減らす必要があるというだけでは足りず、契約満了を待たずに解雇しなければならないだけの事情が必要になるということです。



 なお、有期社員の期間途中の整理解雇でも、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の妥当性といった事情は、やむを得ない事由があるかを判断するうえで重要な考慮要素となります。16条と17条とで同じ4要素を見るからといって、解雇のハードルまで同じになるわけではなく、16条の場合には、これらの事情を踏まえて、整理解雇に客観的合理性と社会的相当性があるかが判断されるのに対し、17条の場合には、これらの事情を踏まえて、契約期間満了まで雇用を継続するという約束を破ってでも今、解雇しなければならないほどのやむを得ない事由があるかが判断されます。




 例えば、経営悪化により人員を10人削減する必要性が認められたとして、無期雇用の正社員については、十分な解雇回避努力を行い合理的な人選基準を用いることによって、整理解雇が有効と判断される可能性があるとしても、仮に有期社員については契約期間があと2か月残っているのであれば、その有期社員を整理解雇するに際しては、なぜ2か月後の契約満了まで待つことができないのかという問題を別途クリアする必要があるということです。会社の経営状況から人員削減の必要性が認められることと、残り2か月の契約期間さえ維持できないこととは、同じではありません。同じ経営状況の下でも、無期社員については16条上の整理解雇が有効となる一方、有期社員については17条のやむを得ない事由が認められず、期間途中の解雇が許されないということも十分あり得ます。




 ご質問にあるように、多くの方が、有期社員は雇用が不安定だから正社員よりも解雇しやすいと考えがちですが、契約期間途中に限ってみれば、有期社員の方が強く保護されている場合があるというを忘れてはいけません。ちなみに、期間の定めのないパート社員の場合は、有期社員とは異なりその解雇には16条が適用されます。一方で、フルタイムの契約社員でも1年間の有期契約であれば、期間途中の解雇には17条が適用されます。ですので、フルタイムかパートタイムかという違いというより、その労働契約に期間の定めがあるかどうかが重要となるということです。




 人員削減に際しては、正社員を守るため、まずパート・有期社員から削減するという方法をとることには慎重であるべきでしょう。考えるべきなのは、誰を切りやすいかではなく、経営上どの事業、店舗、職務をどの程度縮小する必要があるのかということで、その上で、担当業務の必要性、配置転換の可能性、能力・資格、勤務成績など、人員削減の目的と関連した客観的な基準によって対象者を選定することです。その結果として短時間・有期雇用労働者が多く対象となることはあり得ますが、最初から雇用区分だけで対象者を決めることとは意味が違います。非正規から先にという単純な順番ではなく、どの仕事を削減する必要があるのかを先に決め、その後に対象者を選び、最後に各人について16条と17条のどちらが適用されるのかを確認することが必要となります。



令和8年10月1日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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