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2026/09/25
ハラスメント

弊社の従業員が、職場の飲み会の席上、お店の女の子に性的な言動をして困らせていたとの報告がありました。このような場合、会社としてどのような対応が必要になりますか



 ご質問にあるような、会社の懇親会や部署の飲み会で、従業員が飲食店の従業員に性的な発言をしたり、身体に触れたりした場合、被害を受けたのは自社の社員ではないのだから、会社としてなにも対応する必要はないと考えてよいのでしょうか。はじめに、男女雇用機会均等法上のセクシュアルハラスメントとの関係をまず考えてみましょう。



 男女雇用機会均等法11条1項は、事業主に対し、職場において行われる性的な言動によって、その雇用する労働者が労働条件上の不利益を受けたり、就業環境を害されたりすることのないよう、相談体制の整備その他必要な措置を講じることを義務付けています。ここでいう職場というのは、会社の事務所や工場に限られず、労働者が業務を遂行する場所として広く解されています。ですので、勤務時間外の宴会についても、実質的に職務の延長と考えられるものであれば職場と評価される可能性があり、会社や部署が主催する歓送迎会、上司が事実上参加を求めている懇親会、会社が費用を負担する会食、取引先との接待などであれば、会場となった飲食店もこの職場に該当する可能性はあります。逆に、同僚数人が休日に私的に集まっただけで会社がまったく関与していない場合には、職場と評価される可能性は低くなります。




 ここで注意が必要なのが、均等法11条1項が事業主に義務付けているのは、職場における性的言動によってその雇用する労働者が労働条件上の不利益を受けたり、就業環境を害されたりしないための措置だということです。飲食店が自社従業員にとって均等法上の職場に該当するとしても、その店で働く女性が別会社の従業員であれば、当然ながら自社の雇用する労働者になるわけではありません。ですので、自社の従業員Aが飲食店の従業員Bに性的な言動をしたというようなケースについて、Bを雇用しているのは飲食店側の会社になるので、Aを雇用する会社がBに対し直接、均等法第11条第1項の措置義務を負う訳ではありません。





 一方で、Bにとっては、その店舗は自らの職場になります。セクハラの行為者については、被害者の上司や同僚だけでなく、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客などもなり得ます。客として来店した他社の従業員による性的言動であっても、店員側からみれば職場におけるセクハラになるので、Bを雇用する会社は、職場でのセクハラについて当然に措置義務を負うことになります。





 では、性的な言動をした従業員を雇用する会社は何もしなくてもよいかというとそんなことはありません。均等法11条3項は、他の事業主から、同条第1項に基づく措置を実施するために必要な協力を求められた場合、これに応ずるよう努めなければならないとしています。ですので、飲食店側の会社が被害を訴えた従業員を保護するため、御社の従業員がどのような言動をしたのか確認してほしいと事実確認への協力を求めてきた場合には、自社としてもこれに応じることが求められます。また、均等法上の事業主の責務として、事業主には、自社の従業員が他の労働者に対する言動について必要な注意を払うよう、研修その他の必要な配慮をすることも求められています。この場合の他の労働者には、他の事業主が雇用する労働者も含まれますので、自社の従業員が取引先や店舗の従業員など社外の労働者に対して性的な言動をしないよう、会社として教育・啓発を行うことも求められているということです。





 会社がご質問にあるような報告を受けた場合、最初に行うべきなのは事実確認です。本人から事情を聴くだけでなく、同席した従業員などからも、いつ、どこで、誰が、誰に対し、具体的にどのような発言や行為をしたのか、相手がどのような反応を示したのかを確認します。店舗側から苦情が来ているのであれば、その内容も正確に記録しておく必要があります。このとき注意する必要があるのが、酔っていて覚えていない、相手も笑っていた、その場では嫌だと言われなかったといった説明だけで問題がなかったと判断しないことです。被害者が場の空気を読んだりして、明確な抗議や抵抗をできなかった可能性があるからです。





 事実が確認された場合には、就業規則に照らして懲戒処分の要否を検討することになりますが、性的な言動があったからといって、直ちに懲戒解雇などの重い処分ができるわけではありません。労働契約法は、懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、その懲戒を無効としています。発言だけなのか身体接触まであったのか、行為の悪質性、反復継続性、被害の程度、本人の役職、過去の注意・処分歴、会社主催の会合であったかといった事情を総合的に考える必要があります。、業務とはまったく無関係の私的な飲み会であれば、会社が懲戒できる範囲はより慎重に判断する必要があります。会社の企業秩序の直接の関連を有するもの及び企業の社会的評価の棄損をもたらすと客観的に認められるような場合を除き、使用者は、職務に無関係な職場外における労働者の行為を規制することは許されません。


令和8年9月25日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹




 

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