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「税理士や社労士とは顧問契約をしているが、弁護士はまだ必要性を感じない」という企業様は少なくありません。実際、日常的な税務・労務手続は税理士・社労士が対応できますので、紛争が起きていない段階では弁護士の関与を意識しにくいのが実情です。しかし、弁護士の役割は「裁判になってから対応する人」ではありません。むしろ、紛争を未然に防ぐこと、紛争が生じた場合の法的リスクを最小化することにあります。
まず前提として、各士業の業務範囲は法律で明確に区分されています。税理士は税理士法第2条に基づき、税務代理や税務書類の作成等を行います。社会保険労務士は社会保険労務士法第2条に基づき、労働社会保険手続や就業規則作成などを行います。一方、弁護士は弁護士法第3条により、「法律事務一般」を取り扱うことができ、紛争性のある法律事務(交渉・訴訟対応など)を独占的に行うことができます。たとえば、
これらは「紛争性」を含むため、原則として弁護士でなければ代理できません(弁護士法72条)。つまり、日常の手続業務と、「法的責任を伴う交渉・紛争対応」とでは、求められる専門性が根本的に異なります。
では、どのような場合に顧問弁護士を検討すべきでしょうか。以下の観点が一つの基準になります。
近年、ハラスメントや未払残業代請求は増加傾向にあります。
たとえば、パワーハラスメントについては労働施策総合推進法第30条の2により防止措置が義務化されています。また、未払残業代請求は、労働基準法114条により付加金(制裁的な金銭)が命じられる可能性があります。従業員数が増えてきた企業(目安:20~30名以上)では、労務紛争のリスクは統計的にも上昇します。この段階では「起きてから相談」ではなく、「起きる前にチェック」が重要です。
業務委託契約、秘密保持契約(NDA)、共同開発契約などが増えている企業では、契約書の条項一つで数百万円~数千万円の損失が生じることがあります。民法(債権法改正後)では契約責任の規律が整理されましたが、損害賠償の範囲(民法416条)や契約解除(民法541条以下)などは専門的な判断を要します。契約書を「形式的に整える」段階から、「リスクを管理する」段階に入った企業は、顧問弁護士の活用が有効です。
内容証明郵便が届く、SNSでの風評被害が発生する、取引先との支払トラブルが起きる――こうした出来事が年1回以上ある場合、それは「偶発的」ではなく「構造的リスク」です。初動対応を誤ると、後の訴訟で不利になることがあります。最高裁判例でも、初期対応の発言や書面が重要証拠になるケースは多数あります。顧問弁護士がいれば、即日相談が可能で、対応の方向性を早期に整理できます。
新規事業の立ち上げ、M&A、業務提携など、法的リスクを伴う経営判断が増えている企業も要注意です。会社法上、取締役には善管注意義務(会社法330条・民法644条)があり、重大な法的リスクを見過ごした場合、経営責任が問われる可能性もあります。「問題が起きてから」ではなく、「意思決定の段階で」弁護士の意見を聞ける体制は、ガバナンス(企業統治)の観点でも意味があります。
顧問契約は「保険」に近い性質を持ちます。主なメリットは次のとおりです。
実務上、「弁護士が入っています」と伝えるだけで不当請求が収束するケースもあります。顧問料は月数万円程度が一般的ですが、未払残業代訴訟1件のコストと比較すれば、費用対効果は高いといえます。
顧問弁護士が必要かどうかの実務的基準は、次の4点です。
これらのいずれかに該当する場合、「まだ問題は起きていない」段階こそ契約を検討すべきタイミングです。弁護士は「トラブル後の消防士」だけではなく、「火が出ない建物を設計する専門家」でもあります。企業規模や事業内容に応じて、リスクの質が変わったと感じたときが、顧問契約を検討する一つの合理的基準といえるでしょう。将来の紛争コストと比較しながら、リスクマネジメントの一環として検討されることをお勧めいたします。
弊所の場合、事業内容、企業規模等に応じ、月額3万円~5万円の範囲で顧問契約を締結させていただいています。顧問契約を締結する段階ではないが法律相談のニーズが発生した場合は、30分あたり5,000円(税抜)の法律相談もご利用ください。