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2025/09/02
賃金・労働時間

宿日直手当について


企業の人事担当者からよく寄せられる質問の一つに「宿日直勤務に対してどのような手当を支払うべきか」というものがあります。特に病院や福祉施設、学校などでは宿日直勤務が日常的に行われているため、労務管理上の重要なポイントとなります。


以前にお伝えしたように、「宿日直」とは、通常業務とは別に、夜間や休日に職場に待機し、緊急時への対応や建物の保安業務などを行う勤務を指します。これらは必ずしも通常の労働と同じ密度の業務があるわけではなく、待機や仮眠を含む場合が多いのが特徴です。しかし、待機(手待)時間であっても労働基準法上は「労働時間」と解されることから、労働時間である以上、通常の賃金の他、時間外労働や休日労働の割増賃金(労働基準法第37条)の支払いが必要となるのが原則です。


ただし、断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたものについては、労働基準法第4章等で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しないとされているので、1日について8時間を超えて労働させることや、1週間について40時間を超えて労働をさせることも可能となり、時間外労働や休日労働という概念はなくなり、結果、使用者は、時間外手当、休日手当を支払う義務もなくなります。



(労働時間等に関する規定の適用除外)

労働基準法41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの





一方で、労働基準法41条が適用しないとしているのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定なので、年次有給休暇や深夜割増賃金等の規定については適用除外にはならないことに注意が必要です。




通達(昭和63.3.14基発150号)によると、「宿直勤務一回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む)又は日直勤務一回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金の一人一日平均額の三分の一を下らないものであること。」が断続的勤務の許可基準とされているので、その基準を下回らない額の手当てを支払う必要があります。




ただし、例えば、労働時間規制の例外としての宿日直許可を受けた宿日直勤務中に、医師が通常の業務と同態様の業務を行った場合には、その業務を行った時間は、労働時間規制の適用を受ける労働時間であることから、宿日直手当とは別に必要な割増賃金を含めた通常の賃金を支払う必要があります(引用:厚生労働省労働基準局「医師の時間外労働の上限規制 に関するQ&A」




また、やむを得ず許可を受けた回数を超えて宿日直に就かせた場合にも、許可を受けた回数を超えて就かせた宿日直については許可の効果が発生せず、通常の労働時間規制の適用を受けることとなる結果、2回目の宿直に対する賃金としては、宿日直手当ではなく、その時間に支払う必要のある通常の賃金(必要な割増賃金を含む。)を支払うことになります(引用:上記Q&A)。

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