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60歳で定年退職した社員を、1年契約で再雇用している会社は少なくなく、また、最近では、人手不足などを背景に、65歳を超えても引き続き働いてもらうケースも増えてきています。定年後再雇用するにあたり注意すべきなのが、労働契約法18条の無期転換ルールです。無期転換ルールとは、同じ使用者との間で有期労働契約が繰り返し更新され、通算契約期間が5年を超えた場合、労働者が申し込むことによって、期間の定めのない労働契約に転換できる制度で、会社はこの申込みを拒否できません。
例えば、60歳で定年退職した社員を1年契約で再雇用し、65歳でさらに1年間の契約を締結した場合、定年後の通算契約期間は6年となり、原則として無期転換申込権が発生します。会社としては、一度定年退職した社員なのだから、無期転換の対象にはならないだろうと考えてしまいがちですが、定年後の再雇用であるという理由だけで、無期転換ルールの適用が除外されるわけではありません。その時に重要になるのが、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法、いわゆる有期雇用特別措置法です。
この法律は、一定の高度専門職と、定年後引き続き雇用される有期契約労働者について、無期転換ルールの特例を設けています。定年後再雇用者については、会社が雇用管理に関する第二種計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けることで、対象者が定年後引き続き雇用されている期間には、無期転換申込権が発生しないことになります。例えば、60歳定年、65歳までの再雇用という制度を採用し、定年後の有期契約が通算5年を超えない会社であれば、そもそも無期転換申込権は発生しませんが、人手不足などを理由に65歳以降の再雇用を柔軟に認めている会社では、知らないうちに無期転換申込権が発生する可能性があり、認定を受ける意味が出てきます。
注意が必要なのが、第二種計画の認定を受けたからといって、会社が自由に雇止めできるわけではないという点です。認定によって除外されるのは無期転換申込権の発生であり、労働契約法19条の雇止め法理は排除されていません。65歳以降も毎年契約を更新してきた社員について、突然更新を拒否した場合、契約更新への合理的な期待が認められれば、雇止めが無効と判断される可能性は残ります。ですので、会社は無期転換の問題とは別に、再雇用の更新基準や雇用終了年齢を明確にしておく必要があります。
では、第二種計画の認定を受けず、定年後再雇用者が無期転換した場合、どうなるのでしょうか。ここで問題になるのが、定年制度との関係で、労働契約法18条は、無期転換後の労働条件について、契約期間を除き、原則として従前の有期労働契約と同一とする旨を定めています。無期転換したからといって、当然に正社員になるわけではなく、正社員に適用される定年規定が、無期転換社員にも当然に適用されるわけではありません。就業規則に、正社員の定年は60歳とすると定められていたとしても、無期転換社員が正社員に該当しなければ、その規定が当然に適用される訳ではないということです。
仮に、無期転換社員に適用される定年規定があったとしても、定年を超えてから無期転換した場合、既に過ぎた定年年齢を理由に、新たな無期労働契約を当然に終了させることもできません。66歳で無期転換した社員について、会社が、当社の定年は60歳だから、無期転換後は直ちに退職してもらうなどと主張することは許されないということです。その場合、会社としては、一般の無期転換社員の定年を60歳としつつ、定年後再雇用を経て無期転換した社員については70歳を定年とする規定を別途設ける等、定年後に無期転換した社員に適用する定年制度を別途整備することが必要となります。ただし、65歳で無期転換した社員について66歳定年を設けるような場合には、無期転換制度の趣旨を潜脱するものとして問題となりえますので要注意です。無期転換後に定年制度を導入すると、労働条件の不利益変更として争われる可能性もあるので、無期転換社員に適用する定年制度を設けるのであれば、無期転換が生じる前に就業規則に定めておくべきです。
令和8年10月10日
リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹