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大学生や専門学校生、高校生などをアルバイトとして雇用する企業は多いですが、その際、人事・給与担当者が迷いやすいのが、所得税の源泉徴収、住民税の特別徴収、雇用保険、健康保険・厚生年金保険の取扱いです。学生なら税金はかからない、学生アルバイトは社会保険や雇用保険に入れなくてよいと理解されていることもありますが、正確ではありません。税金については、学生と一般のアルバイトで基本的な取扱いに大きな違いはありませんが、雇用保険と健康保険・厚生年金保険には、学生であることを理由とした重要な適用除外があることに注意が必要です。
給与を支払う事業者には、基本的に源泉徴収義務があり、正社員だけでなく、パート・アルバイトにも適用され、学生だから源泉徴収をしなくてよいなどということはありません。具体的な税額については、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が提出されている主たる勤務先では源泉徴収税額表の「甲欄」を、提出されていない勤務先では「乙欄」を使用して計算することになります。学生の場合に特徴的なのが勤労学生控除で、一定の学校の学生・生徒で、自分の勤労による所得があり、合計所得金額などの要件を満たす場合、この控除を受けることができます。学生証を持っていると自動的に所得税がゼロになるというような制度ではないので、給与担当者は、学生であるという理由だけで源泉徴収を省略せず、扶養控除等申告書の内容に従って処理することが必要です。学生の場合、複数のアルバイトを掛け持ちしていることが多いですが、扶養控除等申告書を同時に複数の勤務先へ提出することはできないので、採用時に他の勤務先の有無を確認しておきましょう。
所得税に限らず、給与所得に対する住民税についても、学生だから特別徴収しなくてよいというような例外はありません。パート・アルバイトであっても、要件を満たせば原則として特別徴収の対象となります。学生アルバイトは基本的に所得(前年度)が少ないので、そもそも住民税が課税されていなかったり、勤労学生控除の結果として給与から差し引く住民税がなかったりすることがほとんどだとは思いますが、これは学生だから特別徴収制度の対象外という意味ではありません。税金と異なり、学生であることが大きな意味を持つのが雇用保険で、大学等の昼間学生については、原則として雇用保険の適用除外となります。ただし、卒業見込証明書を有し、卒業前から勤務を開始して卒業後も引き続き同じ会社で勤務する予定の者や、一定の夜間・定時制の学生などについては、学生であっても雇用保険の適用対象となり得ますすので、採用時には、単に大学生ですかと聞くだけではなく、昼間部なのか夜間・定時制等なのか、卒業予定日はいつなのか、卒業後も継続雇用する予定があるのかまで確認するようにしましょう。
健康保険・厚生年金保険についても、学生には特則があります。まず大原則として、適用事業所で働く者について、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば、パート・アルバイトや学生という名称にかかわらず、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。学生でありながら通常の労働者の4分の3以上就労しているような人はあまりいないかもしれませんが、いる場合は加入が大原則です。一方で、4分の3基準を満たさない短時間労働者については、通常、いわゆる短時間労働者(特定適用事業所等で週の所定労働時間が20時間以上等の要件を満たす必要あり)への社会保険適用制度がありますが、学生の場合は適用除外となります。例えば、週25時間働く大学生が正社員の4分の3基準には達していない場合、一般のパート従業員なら短時間労働者として社会保険の加入対象となりますが、学生であるという理由で、原則、対象外となるということです。ただし、休学中の者、大学の夜間学部や高校の定時制課程の学生、通信制課程の学生などは、この学生除外の対象にならないので、条件によっては短時間労働者として社会保険へ加入することもあります。
このように、学生アルバイトの取扱いは、税と社会保険で大きく異なります。源泉所得税と住民税については、学生であっても基本的には一般の給与所得者と同じ制度が適用されるのに対して、雇用保険では昼間学生が原則として適用除外となり、健康保険・厚生年金保険についても短時間労働者の適用要件から学生が原則として除外されています。ただし、前述のように、卒業後の継続雇用、休学、夜間・定時制・通信制などによって結論が変わりうるので、採用時には学校名だけでなく、学校・課程の種類、昼間・夜間・通信制の別、卒業予定年月、週の所定労働時間・日数、卒業後の継続雇用予定などを確認しておきましょう。源泉所得税、住民税、雇用保険、健康保険・厚生年金保険は、それぞれ別の法律と要件で動いていますので、採用時に制度ごとの判定を行い、休学・卒業や勤務時間の変更があったときには改めて判定することが必要です。
令和8年8月17日
リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹