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2026/10/05
賃金・労働時間

変形労働時間制とシフト制、それぞれのメリット・デメリットを教えてほしい



 飲食店や小売店、宿泊施設、介護施設など、日や季節によって忙しさが変わってくる職場では、毎日同じ時間に従業員を勤務させることが必ずしも合理的ではないため、変形労働時間制やシフト制が採用されていることが多いです。変形労働時間制というのは、忙しい日には法定労働時間である1日8時間を超えて働いてもらう代わりに、別の日の労働時間を短くするなど、一定期間を通じて労働時間を配分する制度です。それに対し、シフト制というは、従業員ごとに、何月何日は9時から17時、翌日は休みといった勤務日や勤務時間帯を割り振る勤務形態になります。




 変形労働時間制は、労働基準法上の労働時間規制の例外の制度にはなりますが、シフト制それ自体は、法定労働時間の例外という訳ではありません。例えば、月曜日は6時間勤務、火曜日は10時間勤務というシフトを組んだとして、通常の労働時間制であれば、火曜日については1日8時間を超えた2時間が時間外労働になり、1週間の合計労働時間が40時間以内だったとしても、この結論は変わりません。これに対し、1か月単位の変形労働時間制を採用し、あらかじめ火曜日を10時間勤務の日として設定していれば、その10時間のうち8時間を超える部分についても、直ちに時間外労働になるわけではありません。一定期間を平均して週40時間以内になるよう労働時間を配分することが認められているからです。




 変形労働時間制を採用すると、業務量の多い日に長く働いてもらい、業務量の少ない日は早く帰ってもらうことができます。その結果、実際の繁閑に労働時間を合わせやすくなり、適切に制度を運用すれば、通常の労働時間制であれば時間外労働となる部分についても、法定時間内の労働として扱える場合がありますが、注意しないといけないは、無条件に残業代を支払わなくて済んだり、会社が業務の都合に応じて後から自由に勤務時間を変更できるような制度ではないという点です。変形労働時間制を採用しても、制度上定めた労働時間を超えて働かせれば時間外労働が発生することがありますし、1か月単位、1年単位など制度ごとに法律上の要件があり、対象期間における労働日や各日の労働時間を適切に特定しておく必要もあります。繁閑をあらかじめある程度予測し、この日は長く、この日は短くと事前に計画できる会社には適しているかもしれませんが、直前にならなければ忙しさが分からない会社では使いにくい面があります。




 これに対し、シフト制は、人員配置を業務の実情に合わせやすいというメリットがあります。例えば飲食店であれば、ランチタイムには人数を増やし、午後の客が少ない時間帯には減らし、夕方から再び人数を増やすといった配置も可能となります。従業員の希望を聞きながら勤務日を調整できることも、学生アルバイトや育児中の従業員などを雇用するうえではメリットになるでしょう。ただし、シフト制だからといって会社が自由に勤務日を決められる訳ではなく、労働契約で週の勤務日数や労働時間が具体的に決まっているのであれば、それに反する形で会社が一方的にシフトを減らすことは問題になりえます。いったん確定したシフトは、その時点で具体的な労働日・労働時間として労働契約の内容になっていると評価されることもあり、会社の都合で確定後のシフトを一方的に削除すれば、休業手当や賃金請求の問題につながるリスクもあります。この点、厚生労働省も、シフト制について、労働条件通知書等で基本的な考え方を明らかにし、シフト作成・変更のルールや最低限勤務する日数・時間数などについては労使間であらかじめ話し合っておくことを示しています。



 繁忙日と閑散日をあらかじめ予測できるのであれば、変形労働時間制には大きなメリットがあるでしょう。これに対して、必要な人数や勤務時間帯を調整したいのであれば、シフト制の方が制度の目的に合っています。ここで重要なのが、この二つが二者択一ではないということで、例えばホテルや飲食店では、シフト制によって誰が何日に勤務するかを決めながら、1か月単位の変形労働時間制を導入し、繁忙日の所定労働時間を9時間、閑散日の所定労働時間を7時間とすることも考えられます。シフト制で、誰が、いつ働くかを決め、変形労働時間制で、その日の労働時間を法定労働時間規制との関係でどう位置付けるかを設計するというわけです。両者の違いを理解して制度を選ぶことが、運用上のトラブルや未払残業代の発生を防ぐうえでも重要になります。



令和8年10月5日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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