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2026/10/18
退職・解雇

協調性・コミュニケーション能力欠如等を理由とする解雇の有効性



 会社で仕事をする以上、上司や同僚との協力は欠かせませんが、従業員の中には、周囲との意思疎通がうまくできず、職場でトラブルを繰り返す人もいます。協調性という言葉は曖昧で、上司の意見に反対する従業員を協調性がないと評価する人もいれば、自分の意見を積極的に述べる従業員として評価する人もいるでしょう。また、無口で同僚との雑談に参加しない従業員であっても、必要な業務連絡を行い、担当業務を適切に遂行しているのであれば、一概にはコミュニケーション能力が欠如しているとは言えません。協調性やコミュニケーション能力の欠如も解雇理由になり得ますが、重要なのは、その従業員の性格や人間関係ではなく、協調性やコミュニケーション能力の欠如によって、業務の遂行や職場秩序にどのような支障が生じているかという点です。



 労働契約法16条は、解雇について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効としていて、協調性やコミュニケーション能力の欠如を理由とする解雇についても、この規定に基づいて有効性が判断されます。協調性やコミュニケーション能力は、組織で働く上での重要な能力ですが、会社が従業員に求めるのは、誰とでも仲良くすることや、上司の意見に無条件に従うような能力ではなく、担当業務を遂行するために必要な協力や意思疎通を行う能力です。そのため、協調性やコミュニケーション能力の欠如を理由とする解雇の有効性は、抽象的な人物評価によってではなく、業務遂行や職場秩序への具体的な支障、その重大性、改善可能性、解雇以外の対応の余地を踏まえて判断されることになります。




 例えば、同僚からの業務上必要な問い合わせを繰り返し無視し、取引先への対応が遅れている場合や、正当な業務指示に従わず、他の従業員の業務を停滞させたりしている場合には、合理的な理由の存在が認められるでしょうし、現実に売上の減少や納期の遅延が生じていなくても、他の従業員に対する威圧的な言動を繰り返し、職場環境を著しく悪化させている場合にも、職場秩序への重大な悪影響があるとして解雇に合理的な理由があるとされる可能性はあるでしょう(ただし、社会通念上相当であると認められない可能性はあります)。




 業務上の支障さえ認められれば、直ちに解雇が有効になるわけではなく、解雇は従業員の雇用を失わせる重大な措置になるので、問題の内容や程度に加え、改善の可能性や、解雇以外の方法で問題を解消できないかという点も重要になります。協調性やコミュニケーション能力の問題には、能力不足の側面と勤務態度不良の側面もあり、例えば、本人は努力しているものの、業務上必要な意思疎通がうまくできない場合には、能力不足の問題としても捉えられるので、会社が具体的な改善点を説明し、教育訓練や業務上の支援を行うことが必要となります。また、必要な意思疎通を行う能力があるにもかかわらず、上司や同僚に反発して意図的に連絡を拒否するような場合には、勤務態度や服務規律の問題としても捉えられますので、注意指導や警告を行い、それでも問題行動が繰り返されたかどうかがポイントになります。




 コミュニケーションに支障をきたしているケースでは、問題の原因が従業員本人だけにあるとは限らず、上司の不適切な指導や職場内の人間関係が原因となっていることもあります。そのような場合には、会社側の対応も検討する必要がありますし、障害の特性によって意思疎通に困難が生じている場合には、合理的配慮の提供義務との関係にも注意する必要があります。場合によっては、配置転換によって問題を解消できるかどうかも検討事項となるでしょう。職務を限定せずに採用した正社員については、現在の部署で問題が生じているからといって、直ちに雇用関係全体を終了させることが相当とは限らないからです。



 協調性・コミュニケーション能力欠如を理由とする解雇の場合に限りませんが、実際に解雇することを検討する場合は、問題行動と業務上の支障を具体的に記録化しておくことが重要です。解雇後に紛争となった場合、単に、協調性がない、周囲とうまくやれないなどと説明するだけでは、解雇の合理性を裏付けることは難しいのが実情です。いつ、どのような言動があり、業務にどのような支障が生じたのか、会社はどのような改善指導を行い、その後の状況はどう変化したのか。こうした事実を積み重ねることが、解雇の必要性を判断するうえでも、紛争に備えるうえでも重要になります。



令和8年10月18日

弁護士 石上秀樹

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