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2026/02/16
その他(労務関連)

労務トラブルに関して、社会保険労務士の先生に対応をお任せできることと弁護士の先生に対応をお任せできることの区別がいまいちよく分からないのですが、どのような基準で依頼する先生を選んだらよいのでしょうか、教えてください。





企業で労務トラブルが発生した際、「社会保険労務士(社労士)」に依頼すべきか、「弁護士」に依頼すべきかで迷われる人事担当者は少なくありません。両者ともに法律の専門家ですが、法律上の権限と役割は明確に異なります。この違いを正しく理解しないまま依頼すると、後から「本来は弁護士でなければ対応できなかった」という事態になりかねません。








まず、両者の業務範囲はそれぞれ次の法律に基づいて定められています。





特に重要なのが、弁護士法第72条です。同条は、

「弁護士でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して法律事務を取り扱ってはならない」



と規定しています。




つまり、紛争(争い)が発生している案件について、代理人として相手方と交渉することは、原則として弁護士しかできないというのが出発点です。


一方、社会保険労務士法第2条は、社労士の業務として、




などを定めています。この違いが、依頼判断の核心になります。







(1)行政手続・書類作成



社会保険や労働保険の手続き(健康保険、厚生年金、雇用保険など)の届出は、社労士の中心業務です。たとえば、


などは、社労士の専門分野です。





(2)労務管理のアドバイス



労働基準法、労働契約法、最低賃金法などに基づく日常的な労務相談も可能です。例えば、





といった「予防法務」分野は、社労士が強みを発揮します。





(3)あっせん代理(特定社労士のみ)




都道府県労働局の「あっせん」手続については、特定社会保険労務士に限り代理が可能です(社会保険労務士法第2条第1項第1号の2)。もっとも、これは行政型ADR(裁判外紛争解決手続)に限られ、訴訟や労働審判は含まれません。





(1)すでに紛争化している場合


従業員から、




などがなされている場合、これは「法律上の紛争」です。この場合、相手方との代理交渉や訴訟対応は弁護士法第72条により弁護士のみが可能です。労働審判(労働審判法)や訴訟に発展した場合は、弁護士でなければ代理人になれないのが原則です(以下の労働審判法4条ただし書に基づき社労士が代理人として許可されることも原則ありません)。



労働審判法第4条 労働審判手続については、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ代理人となることができない。ただし、裁判所は、当事者の権利利益の保護及び労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当と認めるときは、弁護士でない者を代理人とすることを許可することができる。






(2)解雇・懲戒など法的リスクが高い




解雇は労働契約法第16条により、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合は無効」とされています。この「客観的合理性」「社会通念上相当性」の判断基準については判例の積み重ねがあり、高度な法的評価が必要なため、弁護士関与が望ましいとも言えます。




(3)損害賠償リスクが大きい案件



ハラスメント事案では、企業に使用者責任(民法第715条)が問われる可能性があります。
訴訟リスクが見込まれる場合は、初期段階から弁護士に相談されることをお勧めします。








実務では、次の3段階で考えると整理しやすいです。




① まだ紛争ではない → 社労士でも弁護士でも可能


制度設計・予防対応・手続中心であれば、社労士、弁護士、どちらのの先生に依頼することも可能です。ただし、弁護士の場合、必ずしも労働法分野に精通していない場合もあることから、労働法分野の紛争について経験豊富な先生に依頼されることをお勧めします。





② 紛争化の兆候がある → 早期に弁護士相談




内容証明郵便が届いた、代理人弁護士から連絡が来た場合は、既に紛争化していると思われることから、はじめから弁護士に相談された方がよいでしょう。





③ 重大処分を検討中 → 弁護士の事前チェック




解雇・雇止め・懲戒処分など、従業員に重大な不利益を生じかねない処分をする場合などは、あとで紛争になったときに違法と評価されるリスクはないか、事前に労務トラブル解決の経験豊富な弁護士によるリーガルチェックを受けるのが安全です。



事前に弁護士に相談してリーガルチェックを受けたいという場合、弊所の法律相談(30分あたり税抜5,000円)ご利用いただくことも可能ですので、いつでもご連絡ください。









実務では、社労士と弁護士が連携する体制が最も効果的な場合も多くあります。





と役割分担を明確にすることで、リスクを最小化できます。近年は、企業法務に強い弁護士と顧問社労士が協働するケースも増えています。依頼先選択の最大の基準は、「すでに法律上の紛争が発生しているかどうか」です。


という整理が基本です。


もっとも、労務トラブルは初動対応で結果が大きく変わります。迷った場合には、早めに弁護士へ相談しつつ、日常管理は社労士と連携する体制を構築することが、企業防衛の観点から最も実務的といえるでしょう。労務分野は法改正も多く、企業の説明責任も年々重くなっています。「誰に相談するか」という判断自体が、リスクマネジメントの一環であることをぜひ意識していただきたいと思います。

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