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2026/07/25
休職関連

休職期間満了後、解雇する場合に気を付けることがあれば教えてほしいです




 従業員が病気やけが、あるいはメンタルヘルス不調によって長期間就労できなくなった場合、多くの企業では就業規則に基づき休職制度を利用しています。休職期間が満了しても従業員が復職できない場合、企業として休職期間が終わったのだから当然解雇できると考えてしまいがちですが、実際には、休職期間が満了したという事実だけで当然に解雇が認められるわけではありません。ご存じのように、解雇は労働契約法16条により厳しく制限されていて、十分な検討を経ずに行われた解雇は無効と判断される可能性があります。



 前回にもお話ししたように、休職制度は労働基準法などによって定められている制度ではなく、企業が就業規則等によって独自に設けている制度になります。病気などによって完全には就労できなくなった従業員について、一定期間は労働契約を維持したまま治療に専念できるようにするための制度であり、また、体調不良のまま就労を続けられることによる会社側の不利益、具体的には、生産性の低下、周囲の従業員への悪影響等の発生を防止するための制度でもあり、従業員保護の側面と企業秩序の維持という双方の目的を有しています。休職期間が満了した場合の取扱いについては、就業規則等に、「休職期間満了までに復職できない場合は自然退職とする」、「解雇することがある」など様々な規定が設けられていますが、そのような規定があるというだけで直ちに退職・解雇が有効となるわけではありません。





 休職期間満了後に解雇とする場合、解雇権濫用法理を明文化した労働契約法16条が適用され、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇はその権利を濫用したものとして無効と評価されます。そのため、会社としては、休職期間満了時点において、本当に従業員が就労できない状態なのか(復職可能性)を慎重に判断することが求められます。この復職可能性とは、単に以前と全く同じ仕事ができるかどうかだけを意味するものではなく、元の業務が困難であっても、業務内容を変更した場合や配置転換を行った場合に就労可能であるならば、直ちに復職不能とは評価できないと解されています。大企業のように多様な部署や職種を有する企業では、配置転換や職務内容の調整によって就労可能となるケースは少なくないでしょう。会社としては、他部署への異動や業務内容の軽減なども含めて復職可能性を検討したことを説明できるようにしておく必要があります。このような検討を全く行わずに解雇した場合には、客観的合理性を欠くものとして解雇が無効となる可能性が高いです。







 復職可能性の判断では医学的な評価が重要です。通常、本人が提出する主治医の診断書を確認することになりますが、主治医は患者本人の治療を担当する立場であるため、職場環境や具体的な業務内容を十分に把握していないこともあります。そのため、会社によっては、産業医による面談を実施したり、必要に応じて会社指定医の診断を求めたりすることもあるでしょうただ、主治医は、患者本人の病状の変化を最も身近に観察してきた医師であるので、会社が復職可能だとする主治医の意見を一方的に(根拠なく)否定して復職不可だと判断することは避けるべきです。あくまでも、主治医の診断、産業医の意見、本人との面談結果、業務内容、勤務実績などを総合的に考慮し、就労可能かどうかを慎重に判断することが求められます。面談では、本人がどの程度回復しているのか、どのような業務であれば就労可能なのか、勤務時間の制限が必要かなどを丁寧に確認しましょう。企業として十分な説明や聞き取りを行った記録を残しておくことは、後日紛争となった場合にも重要な証拠となります。




 近年、メンタルヘルス不調による休職が増加していますが、このようなケースでは特に慎重な対応が必要です。精神疾患は症状の波が大きく、短期間で回復する場合もあれば、段階的な職場復帰が適切な場合もあり、短時間勤務や試し出勤制度など、段階的復職制度を導入している企業も増えています。このような制度があるのであればその利用を検討し、ない場合であっても、職場復帰に向けて慎重に進めるべく、本人から最新の診断書を取得し、場合によっては産業医との面談も実施し、それらの診断結果や医師の意見、復職面談での本人の希望等を踏まえ、配置転換や勤務条件の変更の必要性、可能性等を検討することになります。それらを踏まえてもなお就労が困難であると合理的に判断できる場合に初めて、解雇あるいは自然退職を検討することになります。




 休職制度は、病気療養中の従業員を保護すると同時に、企業が適切な人事管理を行うための制度でもあります。退職という従業員にとっては重大な効果が発生する以上、その運用を誤れば、解雇無効や損害賠償請求などの重大な法的リスクにつながります。休職期間満了後の対応は、人事労務管理の中でも特に紛争が生じやすい場面です。会社が休職を命じる手続、復職可能性を判断する手続、自然退職の通知(解雇通知)の手続、すべての手続において従業員をできる限り納得させられるよう、会社として丁寧な対応をすることが求められます。


令和8年7月25日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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