休業と休職、似たような言葉ですが、改めて、違いを説明しろといわれると難しいかもしれません。
休職は従業員の自己都合による休暇なのに対し、休業は会社都合、あるいは制度による休みだと説明されている記事をよく見かけますが、ほんとにそうでしょうか。
休職とは、「ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその休業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除することまたは禁止すること」と定義されています(引用:菅野和夫・山川隆一「労働法」)。
かかる定義からすると、休職の場合は、会社都合による場合は含まれていないとも読めそうです。
しかし、ある従業員について労務に従事させることが不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に労務への従事を禁止する場合などは、会社都合による休職といえなくもありません。
事実、「本人の都合または本人の責めに帰すべき事由による休職の場合には賃金は支給されず、かつ勤続年数への参入も行われないのに対し、会社の都合による休職の場合はその内容に応じ60%~100%の範囲で賃金が支給され、かつ勤続年数への参入も高い比率で行われる」(引用:菅野和夫・山川隆一「労働法」)と書かれており、会社都合による休職もあることが前提となっています。
一方、休業とは、労働契約上、労働義務がある時間について労働をなしえなくなることで、集団的(一斉)休業や個々人のみの休業を問わないとされています。
集団的休業はイメージが湧きやすいかと思いますが、個々人のみの休業ってなんなんだ、休職と何が違うのかと思われませんか。
この点、育児休業や介護休業を思い浮かべてもらうとイメージしやすいかもしれません。育児休業や介護休業を規定している法律の名称自体が、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」となっていて、育児休職、介護休職とはされていません。
通常、育児休業や介護休業は、集団的(一斉)にするものではなく、個々人でするものですので、個々人のみの休業というのはありえるものだということはご理解いただけると思います。
このように、会社都合か自己都合か、集団的(一斉)か個々人かによって、休職と休業が使い分けられている訳ではないので、休職と休業の意味はたいして変わらないのではないかと個人的には考えています。
休職であろうが休業であろうが、重要なのは、労働者が労務への従事を免除される原因が、会社都合か自己都合か、自己都合の場合、育児や家族介護のため等、労働者からの申し出があれば休業を義務付けられている理由か否かを区別することです。
会社都合による(事業者の責めに帰すべき)休職・休業であれば、会社は休業期間中、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります(労基法26条)。