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2026/08/03
その他(労務関連)

不採用になった理由を聞いてもいいのでしょうか?



 就職活動や転職活動などで不採用通知を受け取ると、なぜ落ちたのか知りたいと思われる方は一定数おられると思います。試験を受けて不合格だった時、点数を知りたいと思うのと同じ理由かもしれません。どちらも、ある程度の手応えを感じた時にそのような感想を持ちがちで、どう考えてもひどい点数なり、散々な印象しか与えられていないと自覚しているときには、落とされた理由なり点数など通常は知りたくないものです。逆に、最終面接まで進んだ場合や、採用を期待させるような説明を受けていた場合には、落ちた理由を知りたいと思うのは自然なことです。





 この点、現在の日本の法律では、会社に対し、応募者に不採用理由を説明する法的義務までは課せられていません。その理由としては、会社は、採用を行うか否か、誰をいかなる基準で採用するか、どのような条件で採用するかに関し、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができると解されているからです。誰を雇うか原則自由に決定できる以上、雇わないという選択も会社の裁量で決めることができ、雇わない理由など開示する義務もなければ、開示することに会社側にはなんのメリットもありません(強いて言うと、理由を開示してくれる信頼できる会社だという印象を応募者らに与えられるというメリットはあるかもしれません)。そのため、不採用通知には、慎重に選考した結果、総合的に判断した結果などの定型文しか記載しかされないケースがほとんどです。




 もちろん、企業に説明義務がないことは理解した上で、応募者が不採用理由を尋ねることまで禁止されているわけではありません。メールなどで、今後の就職活動の参考にしたいため、可能な範囲で選考結果についてご教示いただけますでしょうかと丁寧に依頼すれば、中には回答してくれる会社もあるかもしれません。人材育成を重視する企業などでは、応募者への配慮として簡単なフィードバックを行う場合もあるようですが、これはあくまで企業の自主的な対応です。多くの企業が不採用理由を開示しない最大の理由は、不要なトラブルの発生を避けるためです。経験不足、コミュニケーション能力に難あり、組織との相性がよくない(一緒に働きたくない)といった理由を説明したとしても、応募者がその理由に納得するとは限りません。説明の仕方によっては、年齢が高いから、女性だから、障害があるから落とされたのではないかといった差別を疑われるリスクもあります。場合によっては、不採用理由として説明した内容が、その後の裁判で企業側に不利な証拠として利用される可能性もあるかもしれません。そのようなリスクがあるのに、あえて不採用理由を通知するという選択をする会社は希少で、ほとんどの企業は詳細な理由を説明せず、定型的な通知にとどめています。




 

 さきほど、「会社は、採用を行うか否か、誰をいかなる基準で採用するか、どのような条件で採用するかに関し、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」と説明しましたが、採用の自由は、法律その他による特別の制限がない限りにおいて認められるもので、その自由は無制限ではありません。例えば、男女雇用機会均等法は、募集・採用における性別を理由とした差別を禁止していますし、労働施策総合推進法は、労働者の募集及び採用について、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなけれなならないことを原則としています。また、障害者の雇用の促進等に関する法律も、障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供を義務付けています。ですので、仮に、女性だから採用しない、高齢だから採用しない、障害があるから不採用にしたといった理由であれば、会社の採用判断自体が違法と評価され、会社の損害賠償責任が問題となる可能性はあります。ただ、その場合であっても、会社に対し雇入れ(契約締結)そのものを強制することはできません。





 一方で、面接を受けた会社から、正式な内定通知が交付され、応募者がこれを承諾しているような場合では、単なる採用選考ではなく労働契約が成立している可能性があるので、このような内定取消しに対しては、損害賠償請求のみならず、解雇無効として労働契約上の地位の確認請求もなしえることになります。その場合、労働契約法16条に基づく解雇規制に服することになり、内定取消しについて、客観的合理性及び社会通念上の相当性が求められます(通常の解雇よりは緩やかに判断されるという見解もあります)。このように、単なる不採用と内定取消しとでは、法律上異なる取扱いになる可能性があるので、自分がどの段階にあったのかを正確に把握することが重要です。


令和8年8月3日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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