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営業職や販売職などでは、基本給に加えて売上に応じた歩合給(インセンティブ)を支給する企業が少なくありません。しかし、歩合給を採用している会社でしばしば問題となるのが、業代の計算に歩合給をどのように反映させるのかという点です。実際上、歩合給は成果に対する報酬だから残業代の基礎には入れなくてよいと誤解されていることがありますが、そのような考え方は労働基準法上は明らかに誤りです。計算方法を誤っていると未払残業代が発生し、後日多額の支払いを求められるリスクがあるので要注意です。
通常、残業代は「1時間当たりの賃金」に割増率を掛けて計算します。
例えば、
であれば、
30万円÷160時間=1,875円
が基礎時給となります。
このように基本給だけだと計算は簡単なのですが、給与の一部に歩合給がある場合、歩合部分をどのように時給換算するのかが問題となります。歩合給も労働者が労働の対価として受け取る賃金である以上、残業代の計算から完全に除外することはできません。労働基準法施行規則19条1項6号は、出来高払制その他の請負制によって定められた賃金について、以下のように、通常の賃金とは異なる計算方法を定めています。
歩合給部分については、
その賃金算定期間中の歩合給総額 ÷ その期間の総労働時間数
によって1時間当たりの単価を求めます。ここで注意すべき点は、分母が「所定労働時間」ではなく「総労働時間」であることです。総労働時間には残業時間も含まれます。
例えば、
であれば、
10万円÷200時間=500円
となります。
歩合給部分については、既に通常賃金相当額が支払われていると考えられるため、企業が追加で支払う必要があるのは割増部分のみとなります。したがって、500円×0.25×残業時間のみが追加支払額になります。ここは固定給部分の計算と大きく異なる点です。
固定給と歩合給が混在している場合は、以下のように計算します。
というケースで考えてみましょう。
まず固定給部分です。
25万円÷160時間=1,562.5円
1,562.5円×1.25×40時間=78,125円
が固定給部分に対応する残業代となります。
次に歩合給部分を計算してみましょう。
10万円÷200時間=500円
500円×0.25×40時間=5,000円
が歩合給部分に対応する残業代となります。
したがって支払うべき時間外割増賃金は、
78,125円+5,000円
で合計83,125円となります。
実際には、給与計算ソフトが自動処理していることもありますが、従業員から説明を求められた時に備えて、歩合給を含む給与の残業代の計算方法は知っておいた方がよいでしょう。実務上よく見られる誤りは、歩合給を残業計算から完全に除外していたり、歩合給についても固定給と同様に所定労働時間で除していたりすることです。会社によっては、歩合給の中に残業代も含まれているので歩合給部分は残業代の計算の基礎には含めないと説明しているケースもありますが、通常賃金部分と割増賃金相当額が明確に区別できていないことがほとんどで、そのような処理は原則認められないことにも注意が必要です。歩合給制度は営業職などの成果を反映しやすい反面、残業代計算を誤りやすい制度でもあります。未払賃金のリスクを避けるためにも、自社の給与計算方法が法令に適合しているかを定期的に確認することが重要です。
令和8年6月23日
リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹