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2026/07/24
休職関連

メンタル不調を理由とする休職が増えてきており、改めて、復職に向けての流れ等を規定する就業規則の見直したいと考えています。どのような点に注意したらよいか教えてほしいです。



 復職の可否は、本人の生活や健康だけでなく、職場の安全、同僚の負担、企業の人員配置にも大きな影響を与えます。就業規則に、病気が治ったときは復職させるとだけ定められているような場合、誰が治ったと判断するのか、主治医と産業医の意見が異なる場合にどうするのか、短時間勤務であれば働ける従業員をどのように扱うのか等が不明で、将来の紛争の種を残すことになりかねません。休職制度は、労働基準法に定められた制度ではありませんが、業務外の病気やけがについて、一定期間解雇を猶予し、療養の機会を与えるために、企業が就業規則や労働契約によって設ける制度です。したがって、休職を開始する要件、休職期間、復職の要件、休職期間が満了した場合の取扱いなどは、就業規則の定めが重要な意味を持ちます。




 企業は、労働契約法5条に基づき、従業員が生命や身体等の安全を確保しながら働けるよう必要な配慮をする義務、いわゆる安全配慮義務を負っています。メンタルヘルス不調が十分に改善していない従業員を無理に復職させ、病状を悪化させれば、安全配慮義務違反が問題となりえます。反対に、働ける状態まで回復している従業員について、具体的な検討をせず復職を拒否し、休職期間満了による退職として扱えば、その有効性を争われるリスクもあります。そのため、従業員の休職を命じたり復職の判断をするにあたり会社が必要と判断した場合には、診断書の提出、本人との面談、産業医、会社指定医または主治医との面談を求めることができる旨を規定しておくことをおすすめします。あと、復職の判断基準を具体的に定めておくことも重要です。復職判断で確認すべきなのは、病名がなくなったか、診断書に復職可能と記載されているかだけではありません。労働契約上求められる業務を、継続的かつ安定的に遂行できる程度まで回復しているかを確認する必要があります。具体的には、決められた時刻に通勤できるか、所定労働時間の勤務を続けられるか、業務に必要な集中力や判断力が回復しているか、職場の指示に従い、周囲と協働できるかといった点を中心に総合的に判断します。






 この点、職種や業務内容を限定せずに雇用された従業員については、現在担当している業務を十分に行えない場合でも、能力、経験、地位、企業の規模、配置や異動の実情などから、現実に配置できる他の業務を行うことができ、その提供を申し出ているのであれば、労働契約に沿った労務の提供があると評価し得るとされています。つまり、職種や業務内容を限定せずに雇用された従業員については、元の部署の元の仕事が完全にできるかだけで判断してはならず、会社の規模、組織、空いている業務、本人の能力や経験を踏まえ、現実的に配置できる別の業務がないかを検討する必要があるということです。だからといって、本人のために新しい職務を作ったり、他の従業員を退けて配置先を用意したりする必要までは求められていません。検討の対象となるのは、あくまで配置される現実的可能性がある業務に限ります。ですので、例えば、就業規則に、復職時には必ず軽易業務を提供するなどと定めてしまうと、会社が実際には対応できない義務を負うおそれがあるので、雇用契約において職種限定が設けられていない従業員に関しては、「会社は、本人の健康状態、能力、職場の状況等を考慮し、必要に応じて配置転換、業務内容の変更、勤務時間の短縮その他の措置を講ずることがある」といった、個別判断を可能にする規定にしておいたほうがよいでしょう。




 

 復職の可否を判断するのは、主治医ではなく、あくまでも会社です。主治医は、通常、本人から聞き取った生活状況や症状を基に医学的判断を行いますが、会社の具体的な職務内容、通勤負担、繁忙期の業務量、職場の人間関係まで十分に把握しているとは限りません。そのため、会社としては、主治医の診断内容だけではなく、産業医等の他の医師の診断結果や試し出勤の結果等の情報を基に、復職の可否を判断することになります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」によると、休業開始から復職後のフォローアップまでは段階的に進めることが望ましいとされています。会社としては、この手引きを参考に、休業開始時の説明、主治医による復職可能性の判断、会社による職場復帰の可否の判断と職場復帰支援プランの作成、最終的な復職決定、復職後のフォローという流れを社内制度として整備することが重要です。仮に、試し出勤やリハビリ勤務を設ける場合には、休職中の通勤訓練として職場に来るだけなのか、実際に会社の指揮命令を受けて業務を行うのかによって、賃金や労災保険の取扱いが異なることから、事前に明確にしておくべきでしょう。目的、実施期間、勤務時間、担当業務、賃金、交通費、社会保険、災害発生時の取扱い、中止の基準等を、就業規則または職場復帰支援規程に明記しておくことが望まれます。




 休職期間満了時の取扱いについては、満了日までに休職事由が消滅しない場合は退職とすると定めるだけでなく、満了前のどの時点までに復職を申し出るのか、どのような資料を提出するのか、会社がどのような手続で判断するのかを明確にしておくことが重要です。満了日の直前に診断書を受け取り、短期間で形式的に判断する運用は避けるべきです。一定期間前に本人へ満了日を通知し、復職意思を確認したうえで、面談、医学的意見の収集、配置可能性の検討を進め、その経過を記録に残しておく必要があります。





 あと、同じ病気による休職と復職が繰り返される場合に備え、復職後一定期間内に同一または関連する傷病で再び就労困難となったときは、前後の休職期間を通算する旨を定めることも考えられます。ただし、同一または類似の傷病か否かの判断は難しいため、同一又は関連する傷病という制限を外し、一定期間内の休業期間はすべて通算するという規定にすることも考えられます。前述のように、休職制度は、労働基準法に定められた制度ではなく、会社が就業規則や労働契約によって設ける制度なので、どのような制度設計にするかは会社が自由に決めることができます。




 休職・復職制度を見直す目的は、復職を認めやすくすることでも、退職扱いを容易にすることでもありません。本人の健康状態を適切に確認し、現実に可能な就業上の配慮を検討したうえで、就労を安定して継続できるかを公正に判断する仕組みを作ること、その結果、労使間の紛争の発生をできるだけ少なくすることが求められます。その仕組みを規定する就業規則には、休職開始の要件、診断書等の提出、産業医や会社指定医による面談、復職の判断基準、配置転換や勤務上の配慮、試し出勤、休職期間満了時の手続、再休職時の期間通算、復職後のフォローを一連の制度として定めた上で、各要件ができるだけ明確になるように規定しておく必要があります。もちろん、規程と実際の運用が一致していることも欠かせません。休業規定のみならず、就業規則の見直しを検討されているのであれば、一度、弊所にご相談いただければ,貴社の運用等に適した内容をアドバイスさせていただきます。


令和8年7月24日

リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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