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近年、うつ病や適応障害などのメンタル不調を理由とする休職・復職をめぐり、企業と従業員の間でトラブルが生じるケースが増えています。「いつまで休職を認めるべきか」「復職を拒否してもよいのか」「復職後に再休職となった場合はどう扱うのか」といった悩みは、多くの会社が直面する共通課題です。
メンタル不調は外見から状態が分かりにくく、判断を誤ると解雇無効や安全配慮義務違反として大きな法的リスクを負いかねません。そこで本稿では、休職・復職をめぐる基本ルールと、会社が注意すべき実務ポイントを整理します。
メンタル不調の多くは、業務外の私病として扱われます。そのため、法律上「必ず休職制度を設けなければならない」という義務はありません。しかし、実際には就業規則で休職制度を定めている企業が大半です。
さらに重要なのが、労働契約法第5条(安全配慮義務)です。これは、会社が労働者の生命・身体・精神の安全に配慮する義務を負うことを定めた規定です。長時間労働や過度なプレッシャーが原因でメンタル不調が悪化した場合、私病であっても会社の責任が問われる可能性があります。実務では、「休職を認めなかった」「復職を急がせた」といった判断が、後に紛争化する例も少なくありません。
休職制度は法律上の義務ではなく、就業規則に基づく制度です。そのため、休職事由・期間・復職要件は就業規則の定めが最優先となります。
例えば、「業務に耐えられない状態が〇か月以上続いた場合に休職を命じる」「休職期間満了までに復職できない場合は自然退職とする」といった定めです。会社は、このルールを個別事情だけで恣意的に変更すると、「平等原則違反」「権利濫用」と評価されるリスクがあります。
休職の開始・継続・復職の判断では、医師の診断書が重要な資料となります。ただし、診断書はあくまで医学的意見であり、最終的に就労可能かどうかを判断するのは会社です。
実務では、「主治医は復職可能としているが、業務内容を考えると難しい」というケースもあります。この場合、産業医意見や配置転換の可能性を含め、慎重に検討する必要があります。
裁判例では、復職の可否は「従前の職務を通常程度に行える状態に回復しているか」を基準に判断されるのが一般的です。単に「働ける気がする」「短時間なら可能」というレベルでは、復職可能と判断されないこともあります。
休職・復職トラブルの多くは、就業規則の曖昧さに起因します。
・ 休職期間の上限
・ 復職判断の方法(診断書、産業医面談など)
・ 復職後のフォロー(試し出勤、短時間勤務)
これらを具体的に定めておくことで、会社の判断に合理性を持たせることができます。
復職を認めないことは、直ちに解雇ではありません。しかし、結果的に休職期間満了による退職につながる場合、実質的に解雇と同視されることがあります。
そのため、「なぜ復職を認められないのか」「どの点が業務遂行上問題なのか」を、客観資料に基づいて丁寧に説明することが不可欠です。
復職後、短期間で再休職に至るケースも少なくありません。この場合でも、すぐに「もう無理だ」と判断するのではなく、業務量調整や配置転換を検討したかどうかが、後の紛争で重要視されます。
メンタル不調による休職・復職は、会社にとって感情的にも判断が難しい問題です。しかし、法的には「就業規則」「診断書・産業医意見」「安全配慮義務」という軸で整理することができます。
ポイントは、
です。メンタル不調をめぐる問題では、後から振り返って合理性を説明できるかが決定的に重要になります。トラブルを防ぐためにも、「慎重すぎるくらいの対応」を心がけることが、企業防衛の観点から最も有効といえるでしょう。
休職・復職をめぐって、会社としてこの対応で問題ないか、疑問に思われるときはいつでも弊所の法律相談をご利用ください。初めてご相談される方には費用等を含め、相談の流れについて事前にご説明させていただきます。