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2025/05/17
休職関連

ノーワーク・ノーペイの原則

 

皆さんは「ノーワーク・ノーペイの原則」というのを聞いたことがあるでしょうか。

 

 

ノーワーク・ノーペイの原則」とは、労働者が労務を提供していない場合、使用者はその部分についての賃金を支払う義務はないという原則のことです。

  

 

要は、働いてない分の賃金は発生しないということで、遅刻したような場合、体調不良などで休んだり早退したような場合、出産や育児・介護のための休業、労災に伴う欠勤等についても適用されます。

   

働かなかった分の賃金は発生しない。

  

会社は慈善事業を行っているわけではないので、ある意味、当たり前の原則ともいえます。

 

 

この原則についての法律上の根拠については、いろいろな考え方がありますが、民法623条、624条1項、624条の2、労働契約法6条等が根拠となると考えます。

 

 

(雇用)

民法623条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

(労働契約の成立)

労働契約法6条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

 

相手方(使用者)がこれ(労働者が使用者に使用されて労働すること)に対して賃金(報酬)を支払うとされていることから、労働した場合に賃金を支払う、逆に言うと、労働していない場合には賃金を支払わないという原則(ノーワーク・ノーペイの原則)に繋がります。

 

 

(報酬の支払時期)

民法624条1項 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

 

 

労働を終わった後でなければ報酬を請求できない、つまり、賃金請求権は労働者の労働義務の履行によって発生するものであって、売買契約の代金債権のように契約の締結により発生するものではないないので、労働義務の履行が賃金請求権の発生要件となります。

 

 

(履行の割合に応じた報酬)

民法624条の2 労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

一 使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき。

二 雇用が履行の中途で終了したとき。

 

既にした履行の割合に応じて報酬を請求できるということは、賃金請求権の発生は労働義務の履行によって発生します。一部履行の場合がそうであるなら、全部履行の場合も同じように考えられます。

 

 

これらの条項はすべて任意規定であるので、当事者がこれと異なる定めをすることは可能です。ノーワーク・ノーペイの原則を徹底するか否か、つまり、遅刻したような場合、体調不良などで休んだり早退したような場合、出産や育児・介護のための休業、労災に伴う欠勤等については、すべて無給とするか、一部でも有給とするかは、企業ごとの考えで決めることができます。

 

例えば、就業規則などで、上記のような場合に賃金を支給すると規定してあれば、ノーワーク・ノーペイの原則にかかわらず、使用者には賃金を支払う義務が生じます。

 

 

一般的に、労働・人事の分野では、欠勤・遅刻・早退をしても減給されない給与形態のことを完全月給制と呼び、反対に、欠勤・遅刻・早退による減給がある給与形態のことを月給日給制と呼んだりします。

 

ノーワーク・ノーペイの原則からすると、月給日給制が原則形態で、完全月給制は例外的な形態ということになりますが、労働事件を担当する中で、完全月給制を原則形態と考えている意見に接することがよくあります。

 

次回以降説明させていただきますが、たしかに、会社の都合で就労が不可能になったケースなど、ノーワーク・ノーペイの原則には例外はあります。しかし、そのような例外にあてはまらない限り、働かない分の賃金は発生しないのが原則と考えるべきではないでしょうか。

 

なにが原則でなにが例外なのか、法律上の争いの中では、それを区別することが非常に重要です。

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