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2026/06/19
賃金・労働時間

シフト制に対する法的な規制について教えてほしい

 

 

 

 労働契約締結時点では具体的な勤務日や勤務時間が確定しておらず、一定期間ごとに作成される勤務表によって実際の労働日や労働時間が決まる働き方のことを、一般的にシフト制と呼んでいます。飲食業や小売業、介護事業、宿泊業など、多くの業種でこのシフト制が採用されていて、利用者数や来客数の変動に応じて人員配置を柔軟に調整できるため、企業にとっては欠かせない勤務形態といえるでしょう。ただ、言うまでもありませんが、シフト制であっても労働契約である以上、労働基準法や労働契約法の適用を受けることが大原則です。シフト制という名称の制度が法律上存在するわけではなく、労働基準法にもシフト制に関する規定はありません。シフト制はあくまでも労働時間の決定方法の一つであり、法的には通常の労働契約と同様に扱われるため、シフト制であることだけを理由に、労働基準法上の労働時間規制や休日付与義務などが緩和されることはありません。




 このシフト制をめぐるトラブルの多くは、採用時に労働条件が十分に説明されていないことが原因であることが多いです。労働基準法においては、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項などを書面により明示しなければならないこととされています(労働基準法第15 条第1項、労働基準法施行規則第5条第1項第2号等、第3項、第4項柱書本文)。シフト制の場合においても、勤務日はシフトによるとのみ記載しているような労働条件通知書は適切ではありません。労働者の労働契約の内容に関する理解を深めるため、シフトにより具体的な労働日、労働時間や始業及び終業時刻を定めることとしている場合であっても、その基本的な考え方を労働契約においてあらかじめ取り決めておくことが望ましいとされています。厚生労働省作成の「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」によると、以下の事項について、あらかじめ使用者と労働者で話し合って合意しておくことが望ましい例として挙げられています。



・ 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯

  (例:「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など)


・ 一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数

  (例:「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)
  (例:「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)

 


 シフト制であっても、労働基準法第32条の法定労働時間規制はそのまま適用されるので、原則として、1日8時、1週40時間を超えて労働させることはできません。例えば、繁忙期に人手不足となったため、シフト表で連日10時間勤務を組んだ場合には、時間外労働が発生します。この場合、事前に労働基準法第36条に基づくいわゆる「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出ていなければなりません。当然、時間外労働に対しては割増賃金の支払義務も発生します。シフト制だから残業管理が不要になるわけではなく、むしろ勤務時間が不規則になるため、労働時間管理が難しくなるという面もあります。




 実務上しばしば混同されているのが、このシフト制と変形労働時間制の関係です。両者はまったく異なる制度で、シフト制とは勤務日や勤務時間を決める方法であるのに対し、変形労働時間制は、一定期間を平均して法定労働時間の範囲内に収めることを条件として、特定の日や週の労働時間を柔軟に配分する制度です。例えば、ある店舗で月初は暇だが月末は繁忙である場合、1か月単位の変形労働時間制を採用することで、繁忙日に長時間勤務を設定することが可能になります。ただし、変形労働時間制を導入するためには、就業規則への規定や労使協定の締結など法律上の手続が必要です。単にシフト表を作成しただけでは変形労働時間制にはなりません。この点を誤解している企業は少なくなく、労働基準監督署の調査で指摘されることもあります。



 シフト制に関し、近年、問題となっているのがシフトカットの問題です。シフトカットとは、会社が労働者の勤務日数や勤務時間を大幅に削減することをいいます。売上減少や業務量減少への対応のため、あまり深く考えることなく行っている会社は多いと思いますが、法的には慎重な検討が必要です。労働契約上、一定程度の勤務日数や勤務時間が予定されていたと認められる場合、一方的なシフト削減は労働契約違反となる可能性がありますし、労働者に働く意思と能力があるにもかかわらず会社都合で就労機会を与えない場合には、労働基準法第26条の休業手当の支払義務が問題になることもあります。同条では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の60%以上を支払わなければならないとされています。具体的な勤務日数がどこまで契約内容となっていたかは個別事情によって判断され、雇用契約書や過去の勤務実績なども重要な証拠となります。




 シフト制を適切に運用するためには、採用段階で勤務日数や勤務時間の目安を示すことも重要ですが、合わせて、シフトの決定時期、変更手続、労働者からの希望提出方法などについてもあらかじめルール化しておくことが望ましいです。パート・アルバイトについても、シフト制の仕事をすることで生活の基盤となる収入を得ていることがある以上、会社の一方的な都合による当然のシフトカットなどはできる限り避けるべきです。シフト制を採用する会社にとって、勤務条件の透明化と予見可能性の確保を図ることはとても重要で、そうすることで後の労務トラブルの発生防止と安定した人材確保にもつながるでしょう。

 リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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