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問題行動を繰り返す社員に対し、その都度口頭で注意しているものの改善が見られない。多くの企業で見られる状況です。しかし、「注意はしている」という事実だけでは、将来重大な問題が発生した場合に会社を守ることはできません。法的には、使用者(会社)には職場秩序を維持し、労働者の安全を確保する義務があり(労働契約法第5条:安全配慮義務)、適切な対応を怠れば会社側の責任が問われる可能性もあります。
社員が問題を起こす場合、その内容はさまざまです。例えば、
特にハラスメントについては、労働施策総合推進法第30条の2により、事業主にはパワーハラスメント防止措置義務が課されています。厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)では、「事実関係の迅速かつ正確な確認」「再発防止措置」「就業規則に基づく適正な処分」が求められています。つまり、「口頭で注意しました」だけでは、法律が求める“措置”として不十分と評価される可能性があるのです。
また、社員を懲戒処分する場合には、労働契約法第15条が「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を要求しています。これは、処分が重すぎたり、根拠が曖昧だったりすると無効になるという意味です。そのため、対応には「段階」と「証拠」が不可欠です。
懲戒処分の前提となるのは、就業規則です。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則の作成・届出を義務付けています。そして、同法第90条により、労働者代表の意見聴取も必要です。重要なのは、「懲戒の種類と事由が就業規則に明記されていること」です。明記されていない処分は原則としてできません。
また、懲戒解雇の有効性が争われた判例(最高裁昭和54年10月30日判決)では、解雇の相当性判断において「過去の指導経緯」や「改善の機会付与」が重視されています。つまり、①事実の確認、②注意・指導の履歴、③改善機会の付与、④段階的処分という流れが重要になります。
では、会社として何をすべきでしょうか。
まず、口頭注意だけで終わらせず、指導内容を必ず記録してください。日時・問題行為の内容・本人の言い分・指導内容を文書に残します。可能であれば「指導書」「始末書」を活用します。記録は、将来の懲戒処分の合理性を支える重要な証拠になります。
社内に「対応手順」がないことが問題の本質です。例えば、
といった段階を就業規則に明記します。減給処分を行う場合は、労働基準法第91条により、「1回の額が平均賃金の1日分の半額以内」「総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1以内」という上限があります。
単に処分を重ねるのではなく、「なぜ問題が起きているのか」を分析することも重要です。
場合によっては産業医面談を実施するなど、会社の安全配慮義務(労働契約法第5条)への配慮も必要です。
ハラスメントであれば、被害者保護を最優先とします。調査は公平に行い、関係者のプライバシーにも配慮します。対応を怠れば、会社が損害賠償責任を負う可能性があります。
社内ルールが曖昧な状態は、会社にとって大きなリスクです。整備すべき事項は以下のとおりです。
特に「弁明の機会」を与えずに処分を行うと、無効となる可能性が高まります。
問題社員への対応は、感情ではなく制度で行うべきです。口頭注意だけでは、①再発防止にならない、②将来の処分が無効になる、③会社の責任が問われるというリスクがあります。今必要なのは、
です。「もやもや」の正体は、手順がないことによる法的リスクの不安です。この機会に就業規則と対応フローを見直し、「属人的な注意」から「組織的な管理」へと転換することが、企業防衛の第一歩になります。問題が重大化してからでは遅いのです。今こそ、仕組みを整えるタイミングといえるでしょう。
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