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2026/03/13
休職関連

「計画年休」と「会社の時季指定義務」の違い




働き方改革関連法の施行以降、企業における年次有給休暇の管理はこれまで以上に重要になっていますが、現場では、「計画年休」と「会社による時季指定義務」の違いが分かりにくいという声がよく聞かれます。どちらも年次有給休暇を取得させるための制度である点では共通していますが、法律上の位置づけや制度の目的は大きく異なります。

年休の基本的な原則は、「労働者が取得時季を指定する」という点にあります。これは労働基準法39条5項に規定されており、労働者が希望する日に年休を取得できるのが原則です。ただし、業務の正常な運営を妨げる場合には、会社は「時季変更権」を行使することができるとされていますが、本来の年休制度は、労働者の請求によって取得する休暇です。しかし、日本では長年にわたり年休取得率が低いという問題があり、年休の取得を促進するために導入された仕組みが「計画年休」と「時季指定義務」になります。






計画年休とは、正式には「年次有給休暇の計画的付与制度」と呼ばれ、労働基準法39条6項に根拠があります。それによると、使用者は労使協定を締結することにより、年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分について、計画的に休暇を与えることができると定められています。この制度の特徴は、会社と労働者代表との間で協定を結ぶことにより、あらかじめ年休取得日を計画的に設定できる点にあります。例えば、会社全体で同じ日に休業する「一斉付与方式」や、部署ごとに交代で休暇を取得する方式などが代表的です。また、夏季休暇や年末年始休暇を年休として計画的に付与する企業も多く見られます。

ただし、計画年休には重要な制限があります。それは「5日を超える部分」に限られるという点です。つまり、労働者には最低でも5日分の年休について自由に取得できる余地を残さなければならないとされています。これは、年休の本来の趣旨が労働者の自主的な休暇取得にあるためです。このように、計画年休は企業の任意制度であり、導入するかどうかは会社の判断に委ねられています。ただし、導入する場合には必ず労使協定が必要であり、会社だけの判断で実施することはできません。








これに対して、時季指定義務は2019年の働き方改革関連法によって新たに導入された制度です。労働基準法39条7項は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、使用者はそのうち5日について、時季を指定して年休を与えなければならないと定めています。前述のように、日本では長年にわたり年休をほとんど取得しない労働者が多く存在することが問題視されていて、その問題を解消するため、労働者の請求を待つのではなく、会社が主体的に取得させる義務を課したのがこの制度になります。



もっとも、会社が一方的に日程を決めてよいわけではなく、会社が時季指定を行うにあたり、あらかじめ労働者の意見を聴く必要があります。実務では本人の希望を確認したうえで取得日を決めることが一般的です。この義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性がありため、企業には年休取得状況を適切に管理することが求められています。









計画年休時季指定義務は、いずれも年休取得を促進する仕組みですが、その法的性質は大きく異なります。計画年休は企業が任意に導入する制度であり、労使協定によって成立します。企業が休暇の取得時期を計画的に設定することで、長期休暇の制度設計や業務調整を容易にすることが主な目的です。これに対して、時季指定義務は法律によって会社に課された義務です。対象となる労働者には必ず年5日の年休を取得させなければならず、違反すれば罰則の対象となります。


ちなみに、計画年休で取得した日数も時季指定義務の「5日」に含めることができます。例えば、計画年休として3日取得していれば、残り2日を取得させれば義務を満たすことになります。








企業がこれらの制度に対応するためには、年休管理を適切に行う必要があります。労働基準法施行規則では、企業に対して「年次有給休暇管理簿」の作成が義務付けられています。この管理簿には、年休の付与日、取得日、残日数などを記録し、3年間保存しなければなりません。



繰り返しになりますが、計画年休時季指定義務は、いずれも年次有給休暇の取得を促進するための仕組みですが、その性質は明確に異なります。計画年休は労働基準法第39条6項に基づく任意制度であり、労使協定によって年休を計画的に付与する仕組みです。一方、時季指定義務は同条7項に基づき、会社が対象労働者に対して年5日の年休を取得させなければならないという法的義務です。企業としては、これらの制度の違いを正確に理解したうえで、年休管理簿の整備や計画年休の活用などを通じて、適切な年休管理を行うことが重要となります。年休制度は労働者の健康と働き方の質を支える重要な制度ですので、企業のコンプライアンスの観点からも適切な運用が求められます。



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