期間の定めのある有期雇用契約は、期間が終了すれば契約の効力は当然に終了し、労働者も使用者も、この終了につき格別の意思表示や理由を必要とされません。そして、有期契約の更新は新たな契約の締結になるので、これを行うか否かは当事者の事由に委ねられるのが原則です(菅野和夫・山川隆一「労働法」参照)。
ただし、以下の条文に規定されているように、雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定されてしまいます。
建物の賃貸借の場合は、同様の黙示の更新の効果として、期間の定めのない契約に転化しますが、雇用契約の場合は、あくまでも従前と同一の条件で更新されるので、期間についても従前と同じ期間になると考えられています。
更新が推定されないためには、有期雇用契約を更新する意思のない使用者は、更新しない(雇止めする)旨の意思表示を対象の労働者に対して行う必要があります。
民法629条(雇用の更新の推定等)
雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。
借地借家法26条(建物賃貸借契約の更新等)
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
使用者が更新しない(雇止めする)旨の意思表示をいつまでにすべきかについては、以下のとおり、基準が設けられています。
労働基準法 14条 2項
厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。
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使用者は、有期労働契約(※)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が終了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。
(※)雇止めの予告の対象となる有期労働契約
① 3回以上更新されている場合
② 1年以下の契約期間の有期労働契約が更新または反復更新され、最初に有期労働契約を
締結して通算1年を超える場合
③ 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
上記のとおり、3回以上の更新がされていたり、通算契約期間が1年を超えるような場合には、契約期間が終了する日の30日前までに更新しない旨の予告をする必要があります。
法令上、予告する必要がある場合は限定されていますが、雇止めされる従業員の方のことを考えると、特に限定することなく、契約期間が終了する日の30日前くらいまでには予告してあげた方がよいでしょう。