有期労働契約においては、期間の満了時に「契約の更新」か「再契約」という選択肢が存在します。これらは似たような言葉ですが、意味や効果は異なります。
まず、「契約更新」とは、現行の労働条件を基本的に維持したまま、契約期間を延長することをいいます。例えば、契約社員が同じ部署・同じ業務内容・同じ賃金条件で、さらに6か月間勤務を続ける場合です。これに対し、「再契約」は、一度契約を終了させ、新たな労働契約を結び直すことをいいます。この場合、労働条件や業務内容、給与水準が見直され、大きく変更されることもあります。要は、契約更新は「そのまま延長」、再契約は「新しい条件でやり直す」という違いです。
労働契約法第19条では、有期労働契約が更新を繰り返し、一定の条件を満たすと、使用者からの更新拒否には客観的合理性と社会的相当性が求められるとされています。これは、いわゆる雇い止めに関する法理を定めた条文ですが、長期間勤務している労働者の雇用を、簡単には打ち切れないようにするための規定です。
また、現実の職場では「黙示の更新」が生じることがあります。契約期間が満了した後も、労働者が引き続き勤務し、使用者もそれを受け入れている場合において、明確な契約更新の手続きがなくても、双方の行動から「契約が続いている」と推定されるのです(民法629条)。使用者が更新を望まない場合には、満了前に明確な意思表示をすることが重要です。
有期労働契約の期間満了後も働き続ける場合、大きく三つのパターンに分けられることになります。
①条件を変えずに延長する「契約更新」、②条件を見直して一から契約を結び直す「再契約」、③手続きを経ずに続いてしまう「黙示の更新」です。このうち、契約更新については、労使間の合意に基づく場合(自動更新の場合も含む)と、労働契約法19条に基づき使用者側の更新拒絶が許されなかった場合に分かれます。
実務的には、使用者側は、有期労働契約期間の満期が近づいてきた労働者について、更新・再契約・非更新のいずれを選ぶかを早めに決定し、労働者に明示することが望まれます。3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告する必要があるので注意が必要です(厚生労働省:「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」)。
有期労働契約を締結している各労働者については、契約期間の満期はいつなのかを把握し、使用者側が意図せず雇用が継続してしまう黙示の更新が発生しないようしっかり雇用管理することが必要です。
一方、労働者側としては、契約更新か再契約かによって、給与・勤務条件・雇用の安定性が変わるため、契約書や通知内容をしっかり確認することが大切です。