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2025/05/18
休職関連

会社都合の休業

 

前回、働いていない分の賃金は発生しないというノーワーク・ノーペイの原則についてお話しました。

 

 

その原則を徹底すると、「閑散期で仕事が減るから」、「システム障害が発生し業務を行えなくなったから」、「機械の検査をする必要があるから」、「監督官庁から操業停止を指示されたから」、極端な場合だと、「あなたが来ると職場の雰囲気が悪くなるから」といった理由等で休業、自宅待機となったような場合も、賃金は発生しないことになり、労働者の生活に支障が出ることにもなりかねません。

 

さすがに、上記のような理由での休業であったら、会社は賃金払えよと思われると思います。

 

そのような場合に備えて、労働基準法は、使用者の休業手当の支払い義務を規定しています。

 

労働基準法26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

この手当のことを休業手当と呼んでいます。

 

 

休業補償と何が違うのかと思われる方もいるかもしれませんが、休業補償というのは、労災補償の一つで、労働災害の影響で減少した給与を補償する趣旨で支払われるものです。一方、休業手当というのは、労災とは関係なく、会社都合での休業の場合に、従業員の最低生活の保障をはかる趣旨で支払われるもので、休業補償とは適用される場面が異なります。

 

 

一般的に、使用者側の都合での休業の場合、使用者から労働者に対し、自宅待機を指示されることが多いのではないでしょうか(自宅待機命令)。

 

 

この自宅待機命令と呼ばれるものは、大きく二つに分けられ、一つ目は、文字どおり自宅で待機する(いつでも出社できるような態勢を整えておく)という業務を命じるケースで、この場合、業務命令により自宅待機をいう労務を提供していると考えられるので、当然、自宅待機期間中の賃金は発生します。

 

もう一方は、出社しないことを命じるに過ぎないケース(使用者による労務提供の受領拒否)で、①機械の故障、原材料不足、悪天候等の影響で仕事ができないことを理由とする自宅待機、②調査や問題の再発防止のための自宅待機、③証拠隠滅の防止のための自宅待機、④懲戒処分の準備としての自宅待機など、理由は様々ありますが、使用者の責めに帰すべき事由による休業か否かにより、休業手当の支払い義務の有無は変わります。

 

 

この「使用者の責めに帰すべき事由による休業」というのは、故意・過失または信義則上これと同視すべき事由に限らず、使用者側に起因する経営・管理上の障害を含むものとされています。

 

例外的に、天災地変や休業の原因が事業の外部から発生し、かつ、通常の経営者としての最大の注意を尽くしてなお避けることのできないものである場合(不可抗力による場合)など、使用者に責任を負わせられない事由による休業については、使用者は休業手当を支払う義務はないとされています。

 

 

一般的には(例外もあります)、①機械の検査、原料の不足、流通機構の不円滑による資材入手難による自宅待機、②監督官庁の勧告による操業停止、③調査や問題の再発防止のための自宅待機、④証拠隠滅の防止のための自宅待機、⑤懲戒処分の準備としての自宅待機などのケースでは、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」とされていて、災害により使用者の事業施設が直接被害を受けたための休業などのケースなどは、不可抗力に該当する場合が多いとされています。

 

 

ちなみに、休業手当は、平均賃金の60%以上の支払いで済みますが、使用者の故意・過失または信義則上これと同視すべき事由があると評価される場合は、賃金全額の支払義務が発生する可能性があることに注意が必要です(民法第536条第2項)。

  

ただし、民法536条は任意規定なので、使用者に帰責事由がある場合でも支払賃金額を一部減額する旨の合意をすることは可能ですが、平均賃金の60%を下回る減額は労働基準法26条に反するのでできません。

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