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2026/11/07
賃金・労働時間

宿直と自宅での夜間緊急電話対応、それぞれ法律上の扱いが異なるのか、よく分からないので教えてほしい



 会社の営業時間が終了した後も、顧客や取引先から緊急の電話がかかってくることがあり、そのために、従業員に会社の携帯電話を持ち帰らせ、夜間に電話があれば対応してもらっているという会社もあると思います。従業員は自宅で待機し、電話が鳴れば応答するか、すぐに折り返すことが求められているものの、実際に電話がかかってくることはめったにないという場合であれば、待機中の外出や外食は自由で、緊急対応に備えて飲酒は禁止されているというようなこともあるでしょう。このような場合、会社は夜間の待機時間すべてについて賃金を支払わなければならないのでしょうか。また、労働基準法施行規則23条が定める宿直勤務として扱う必要はないのでしょうか。



 労働基準法上の労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。実際に作業をしている時間だけでなく、作業をしていない時間であっても、使用者の指示があれば直ちに業務を行わなければならない状態に置かれていれば、労働時間に該当することもあります。例えば、会社の事務所で電話番を命じられ、電話が鳴らない間もその場を離れることができない場合には、実際の通話時間が短くても、原則として待機時間全体が労働時間になります。それに対し、自宅での夜間緊急電話対応、いわゆるオンコール勤務については、少し事情が異なります。自宅で待機している従業員は、電話がかかってこない間、食事をしたり、テレビを見たり、睡眠を取ったりすることができますし、外出も自由であれば、会社の事務所に拘束されている場合と比較して、私生活上の自由は大きいので、自宅で電話を受ける義務があるからといって、待機時間のすべてが当然に労働時間となるわけではありません。




 もちろん、自宅にいるという理由だけで労働時間に該当しなくなる訳ではなく、例えば、電話が頻繁にかかってきて、その都度対応しなければならない場合や、着信から数分以内に必ず応答することが求められ、入浴や睡眠さえ十分に取れない場合には、実質的に会社の指揮命令下に置かれていると評価されることもあるでしょう。労働時間に当たるかは、待機場所が会社か自宅かという形式的な違いではなく、従業員が労働から離れることをどの程度保障されているかという基準でも判断されます。今回のように、電話がかかってくることはまれで、外出や外食も自由という場合には、待機時間全体を労働時間としない方向に働きますし、一方で、飲酒が禁止されていることは、私生活に一定の制約が課されていることを意味しますが、飲酒禁止という事情だけで、直ちに待機時間全体が労働時間になるわけではありません。



 では、このような夜間緊急電話対応を、労働基準法上の宿直勤務として扱うことはできるのでしょうか。労働基準法施行規則23条は、断続的な宿直又は日直勤務について、所轄労働基準監督署長の許可を受ける制度を設けています。宿直とは、一般に、通常の勤務が終了した後も会社や施設に泊まり、緊急電話の受付や巡視などを行う勤務です。宿直中は勤務場所に拘束されるため、待機時間も原則として労働時間となりますが、宿日直許可を受ければ、許可された勤務について労働時間規制の適用が除外されます。

 


 この点、自宅でのオンコール勤務の場合、待機時間そのものが労働時間に該当するかがまず問題になります。そもそも労働時間に該当しないのであれば、宿日直許可によって労働時間規制を除外する必要などありません。今回のように、電話がめったにかかってこず、外出や外食も自由とされているような場合、待機時間全体を労働時間と扱わないという判断には相応の根拠があり、宿直として扱う必要はないかもしれません。ただ、実際に電話対応をした時間は労働時間となりますので、必要な賃金を支払う必要があり、午後10時から午前5時までの深夜時間帯に対応した場合には、深夜割増賃金の支払義務も問題になります。電話対応だけでなく、必要に応じて現場へ駆け付ける義務がある場合には、対応までに許される時間や移動範囲の制限等の条件によっては、待機時間の評価が変わる(労働時間として評価される)可能性もあるので、会社としては、緊急電話の着信回数や対応時間を記録するとともに、従業員にどの程度迅速な対応を求めているのか、待機中にどのような行動制限を課しているのかを明確にしておく必要があります。



 待機時間が労働時間に該当しないとしても、飲酒を禁止するなど一定の負担を課している以上、賃金を全く支払わないというのは担当者にとっては酷なので、実際は、何らかの手当を支給していることも多いのではないでしょうか。自宅での夜間緊急電話対応について重要なのは、電話が鳴った時間だけでなく、電話が鳴らない時間を従業員がどれほど自由に過ごせるかという点です。会社としては、単に電話の回数が少ないからそれほど負担にならないだろうと単純に考えるのではなく、即応義務や行動制限の実態次第では、待機時間全体が労働時間と評価されることもあり得るんだという意識は持っておかれた方がよいと思います。


令和8年11月7日

弁護士 石上秀樹

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