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2026/10/29
賃金・労働時間

法定労働時間を超えた時間の計算方法を具体的に教えてほしい



 従業員に残業をさせた場合、会社は、法定労働時間を超えた時間について、原則として25%以上の割増賃金を支払う必要がありますし、36協定で定めた時間外労働の上限を守るためにも、法定労働時間を超えた時間は正確に把握しておく必要があります。労働基準法32条は、原則として、1日8時間、1週間40時間を法定労働時間としているので、法定時間外労働を把握するためには、1日単位と1週間単位の両方で労働時間を確認する必要があります。




 最初に確認するのは、各日の実労働時間です。例えば、午前9時から午後6時まで勤務し、途中に1時間の休憩を取得した場合、実労働時間は8時間ですが、午後7時まで働いた場合は9時間となるので、1日8時間を超えた1時間が法定時間外労働になります。注意が必要なのが、会社が定める所定労働時間と法律で定める法定労働時間の違いで、例えば、午前9時から午後5時まで休憩1時間を除いて7時間勤務する会社で、午後6時まで働いた場合は、所定労働時間を1時間超えていますが、実労働時間は8時間なので、この1時間については法定時間外労働になりません。1日の労働時間が8時間以内であっても、1週間の労働時間が40時間を超えることもあるので、1週間の実労働時間についても確認が必要です。例えば、月曜日から金曜日まで毎日8時間勤務し、土曜日にも5時間働いたとした場合、月曜日から金曜日までの労働時間は40時間ですが、土曜日の5時間を加えると45時間になります。1日8時間を超えた日はありませんが、週40時間を5時間超えているので、この5時間が法定時間外労働になります。



 よく聞かれるのが、1日8時間と週40時間の両方を超えている場合は、どのように計算したらよいのかという質問です。例えば、月曜日に10時間、火曜日から金曜日まで各8時間、土曜日に4時間働いたとします。1週間の実労働時間は46時間で、月曜日には1日8時間を超えた労働が2時間あります。一方で、週40時間を超えた時間が6時間あるので、これを単純に合計してしまいがちですが、これは誤りです。なぜなら、月曜日の2時間が二重に計算されてしまっているからです。正しくは、まず1日8時間を超えた2時間を法定時間外労働として計上し、その2時間を除いた44時間について、週40時間を超える4時間を別途計上して、それらを合計しますので、法定時間外労働は合計6時間になります。このように、1日8時間を超えた時間を先に計算し、その時間を除いて週40時間を超えた部分を計算することで、重複を避けることができます。




 法定労働時間を超える時間の計算をする際に問題となるのが、1週間をいつからいつまでとして計算するかという点です。行政解釈では、就業規則その他に別段の定めがない限り、1週間は日曜日から土曜日までの暦週をいうとされているので、会社が月曜日から日曜日までを1週間として管理したい場合には、就業規則などで起算日を規定しておく必要があります。法定休日に働いた時間についても注意が必要で、法定休日労働は、原則として週40時間の計算には含めず、休日労働として別に集計します。例えば、月曜日から土曜日までに40時間働き、法定休日である日曜日に8時間働いた場合、その8時間については、週40時間を超える時間外労働ではなく、法定休日労働として扱います。これに対して、土曜日と日曜日が休日の会社で、日曜日を法定休日としている場合、土曜日に出勤した時間は法定休日労働ではないので、土曜日の勤務によって週40時間を超えれば、その超過部分は法定時間外労働として扱うことになります。




 細かい話になりますが、週の途中で月が替わる場合も注意が必要で、例えば、週の起算日が日曜日であれば、月末が水曜日であっても、翌月の土曜日までを一つの週として計算します。そのため、36協定の月間時間外労働を管理する場合には、週40時間超の労働がどの日に発生したかを確認し、その日の属する集計期間に計上する必要があります。ちなみに、ここまでの説明は通常の労働時間制を採用している場合の計算方法なので、1か月単位や1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制などを採用している場合には、当然、法定時間外労働の判定方法は異なります。忘れがちですが、常時10人未満の労働者を使用する一定の商業・サービス業などの場合、週44時間の特例が適用される場合もあることに注意が必要です。



 法定時間外労働を正確に把握するためには、タイムカードやパソコンの使用記録などによって日々の実労働時間を確認したうえで、日単位と週単位の両方で集計することが重要になります。休憩時間についても、単に勤務表に記載されている時間を差し引くのではなく、実際に労働から解放されていたかを確認する必要があります。法定時間外労働の計算を誤ると、未払残業代が発生するだけでなく、36協定の上限時間を超えて働かせてしまうリスクもあることから、会社としては、所定労働時間を超えた時間と法定労働時間を超えた時間を区別した上で、日々の勤怠記録から正確に計算できる仕組みを整えておきましょう。



令和8年10月29日

弁護士 石上 秀樹

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