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公務員の不祥事を伝えるニュースを見聞きしていると、戒告処分とした、訓告としたといった言葉が使われているのに気づかれるのではないでしょうか。どちらも職員を戒める措置で一見すると同じようにも思えるかもしれませんが、戒告と訓告には、懲戒処分に当たるかどうかという点で大きな違いがあります。国家公務員については、国家公務員法が、職員が法令に違反した場合や、職務上の義務に違反した場合、職務を怠った場合などに懲戒処分を行うことができるとし、その種類として免職、停職、減給、戒告を定めていて、地方公務員についても、地方公務員法が、戒告、減給、停職、免職を懲戒処分として定めています。つまり、戒告は法律に基づく正式な懲戒処分ということになります。
懲戒処分といっても、戒告は、減給や停職ほど重い処分ではなく、給与が減額されたり、一定期間仕事ができなくなったりするわけではありません。懲戒処分の中では最も軽いものにはなりますが、それでも、単に上司から注意を受けた場合とは意味が異なります。正式な懲戒処分を受けた事実が残りますし、具体的な扱いはそれぞれの法令や規則、人事制度などによりますが、昇給や勤勉手当などに影響することもあるでしょう。
一方、訓告は、国家公務員法や地方公務員法が定める懲戒処分ではありません。職員に問題があったからといって、すべてのケースで懲戒処分が必要になるわけではなく、行為が比較的軽微であったり、事情を考慮すると懲戒処分までは必要ないと判断されたりすることもあります。そのような場合に、本人に反省を求め、今後同じことがないよう注意する措置として訓告が行われます。その意味では、訓告は処罰というよりも、職員を指導・監督する立場から行う措置と考えた方が分かりやすいかもしれません。組織によっては、厳重注意や文書注意といった名称が使われることもあります。ただし、訓告なら人事上まったく影響がないとはいえず、訓告を記録として残すのか、その後の人事評価などでどのように扱うのかは、組織の規程や運用によって異なります。
民間企業では公務員とは少し事情が異なり、民間企業の戒告や訓告については、国家公務員法や地方公務員法とは異なり、労働基準法などに一律に定められているわけではなく、会社ごとの就業規則や懲戒規程の中で処分の種類や内容が決められています。労働基準法89条9号によると、会社が制裁について定める場合には、その種類と程度に関する事項を就業規則に記載することが求められているに過ぎないので、ある会社では戒告を最も軽い懲戒処分とし、訓告を懲戒処分ではない注意として扱っていても、別の会社では違う制度になっていることもありえます。そのため、民間企業で戒告や訓告が問題になったときにまず確認すべきなのは、その会社の就業規則ということになります。ただし、就業規則に戒告が定められているからといって会社が自由に処分できるというわけではなく、労働者の行為の性質や態様などに照らして客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として無効とされることもあります。懲戒処分は、就業規則に根拠があればそれだけで足りるものではなく、問題となった行為と処分の重さが釣り合っていることが必要です。
令和8年8月28日
リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹