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2026/06/16
賃金・労働時間

弊社は、フレックスタイム制度を導入していて、コアタイムも設定しています。従業員がこのコアタイムに遅刻した場合、どのように扱ったらよいのでしょうか。





 労働基準法第32条の3に基づきフレックスタイム制を導入している企業では、ご質問にあるように、コアタイムに遅刻した場合をどのように扱うべきかという疑問が生じえます。結論からいうと、コアタイムが設定されている以上、その時間帯は労働者に勤務義務が課されているため、コアタイム開始時刻に間に合わなかった場合には遅刻として取り扱うことは問題ありません。



 ただし、通常の固定労働時間制における遅刻とは異なり、フレックスタイム制では労働時間を清算期間全体で管理するという特徴があるため、遅刻があったから直ちに賃金控除を行うことができる訳ではないことに注意が必要です。例えば、コアタイムが午前10時から午後3時までと定められている会社で、従業員が10時15分に出社したとします。この場合、コアタイムへの遅刻という事実自体は認められます。しかし、その従業員が終業時刻を15分後ろにずらし、その日の所定労働時間を確保した場合には、清算期間全体の総労働時間には不足が生じていませんので、この場合、賃金控除を行うことが許されないことになります。フレックスタイム制は、日単位ではなく清算期間単位で労働時間を管理する仕組みですので、単にコアタイムに15分遅れたという理由だけで賃金を控除すると、制度の趣旨と整合しないことになってしまいます。そのため、実務上は、コアタイムへの遅刻は勤怠記録上「遅刻」として記録する一方で、清算期間終了時点で必要な総労働時間を満たしている場合には賃金控除を行わないという運用がされているケースが多いでしょう。この方法であれば、コアタイムの規律を維持しながら、フレックスタイム制の柔軟性も確保することができます。




 では、コアタイムへの遅刻等を繰り返す従業員に対しては、何のペナルティも課せられないのでしょうか。会社の立場からすると、何のためにコアタイムを設定したのか分からなくなるのではないかと考えても不思議ではありません。この点は、賃金の問題と人事管理上の問題を区別して考える必要があります。たとえ総労働時間を満たしていたとしても、会議への参加ができなかったり、顧客対応に支障が生じたりする場合には、勤務態度の問題として指導や人事評価の対象とすることは可能です。特にコアタイムは部署内の連携や情報共有のために設定されることが多いため、遅刻が繰り返される場合には業務運営への影響も無視できません。コアタイムに遅刻しないよう注意指導をしても改善が見られず、コアタイムへの遅刻を繰り返すような場合には、就業規則の定めに従って懲戒処分を検討する余地はあります。もちろん、1回の遅刻だけで懲戒処分を行うことは相当ではないので、労働契約法第15条の懲戒権濫用法理との関係から慎重な対応が求められることは言うまでもありません。




 後でトラブルになることを防ぐため、就業規則やフレックスタイム規程において、コアタイムへの遅刻をどのように取り扱うのかをあらかじめ明確に定めておくことが望ましいでしょう。例えば、就業規則等に、「コアタイムに遅刻・早退・欠勤した場合は、精勤手当又は皆勤手当を支給しない。」「正当な理由なくコアタイムに遅刻・早退・欠勤してはならない。正当な理由なくコアタイムへの遅刻等を繰り返す場合は、減給処分を行うことがある。」などといったルールを明記・周知しておけば、従業員にも理解されやすく、後日の労務トラブルを減らすことに繋がるかもしれません。実際のところ、フレックスタイム制の運用で問題になるのは遅刻そのものよりも、フレックスだから何時に出社してもよいという誤解です。コアタイムを設けている以上、その時間帯には勤務義務があることを制度導入時から十分に周知し、勤怠管理や評価制度との関係も整理しておくことが、フレックスタイム制の円滑な運用のためには不可欠です。


リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹

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