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精神科を受診した際に、うつ病エピソードや反復性うつ病性障害といった診断名を聞き、違いがよく分からず戸惑うこともあると思います。この二つはどちらも、いわゆる“うつ病”に関係する診断名ですが、精神医学上は少し意味が異なります。簡単にいえば、うつ病エピソードは現在起きているうつ状態そのものを指し、反復性うつ病性障害は、そのうつ状態を繰り返す病気の経過を示す診断です。
日本の精神科医療では、WHOの国際疾病分類であるICD-10等(令和9年1月よりICD-10を改訂したICD-11(2023年版)に準拠する予定)に基づいて診断が行われることが多く、そこではうつ病関連の診断が細かく分類されています。その中で、うつ病エピソードは比較的初回のうつ状態を表す概念として使われる一方、反復性うつ病性障害は、うつ状態を何度も繰り返している場合に用いられます。この場合のエピソードとは、一定期間続く一まとまりの症状という意味で、うつ病エピソードとは、抑うつ気分や意欲低下、不眠、食欲低下、集中力低下などの症状が、一定期間続いている状態を指します。
一般的に、一時的に落ち込んだだけではうつ病エピソードとは診断されません。少なくとも2週間以上にわたり、ほぼ毎日症状が続き、仕事や日常生活に支障が出ていることが必要とされています。たとえば、仕事上のトラブルが続き、朝起きられなくなったり、出勤前に強い不安が出たり、以前は普通にできていた業務が極端につらく感じられるようになったり、趣味を楽しめなくなったり、人と話すことが億劫になったりといった症状が続き、医師が診察のうえ診断基準を満たすと判断した場合にはじめて、うつ病エピソードと診断されます。
これに対して、反復性うつ病性障害は、うつ状態を繰り返している場合の診断名で、一度うつ病エピソードを経験した後、回復し、その後再びうつ状態になった場合などに検討されます。うつ病は一回限りで終わる人もいれば、何度か再発を繰り返す人もいることが知られています。特に、強いストレス環境が長期間続く場合や、十分に休養できないまま無理を重ねた場合には、再発リスクが高くなるとされています。反復性うつ病性障害と診断される場合、過去にうつ病エピソードが存在し、その後ある程度回復した時期を経て、再びうつ状態が出現していることが前提になります。言い換えれば、単発のうつ病ではなく、再発を繰り返すタイプのうつ病という位置づけになります。たとえば、数年前に仕事のストレスでうつ病になり、休職や治療によって回復したものの、新しい職場や業務負荷をきっかけに再び強いうつ状態が出現した場合、反復性うつ病性障害と診断されることがあります。
仕事の関係でも、うつ病エピソードと反復性うつ病性障害の違いは重要で、例えば、仕事上のストレスが原因でうつ病が悪化した場合、労災申請や休職制度との関係で、初発なのか、再発なのかが問題になることがあります。反復性うつ病性障害だから労災にならないというわけではなく、労災認定の際に使われる「心理的負荷による精神障害の認定基準」によると、「既存の精神障害について、一定期間、通院・服薬を継続しているものの、症状がなく、又は安定していた状態で、通常の勤務を行っている状況にあって、その後、症状の変化が生じたものについては、精神障害の発病後の悪化としてではなく、症状が改善し安定した状態が一定期間継続した後の新たな発病として判断すべきものがある」とされています。実際のところ、仕事を始める前は症状が安定していたが、入社後の過重労働やハラスメントを契機に急激に悪化したというケースは少なくありません。会社側や労働基準監督署から、もともとの病気が原因ではないかという指摘がされることもあるため、どの時点で症状が悪化したのか、どのような業務負荷があったのかを整理しておくことが重要になります。
仕事によるストレスが原因でうつ症状が出ている場合、多くの人は「まだ頑張れる」「休むほどではない」と無理をしがちです。しかし、うつ病は、悪化すると判断力そのものが低下する病気です。「以前より明らかに集中できない」、「休日でも回復しない」、「出勤前に涙が出る」、「眠れない」といった状態が続いている場合は、早めに専門家へ相談してください。
リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹