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ここ数年で、日本企業による外国人労働者の採用は急速に拡大しています。背景にあるのは、深刻な人手不足です。建設業、製造業、物流業、介護業、飲食業など、多くの業界で人材確保が難しくなり、「外国人なしでは現場が回らない」という声も珍しくなくなりました。政府も、技能実習制度や特定技能制度を通じて外国人受入れを拡大してきた結果、日本で働く外国人労働者数は過去最多を更新し続けています。
その一方で、外国人労働者の労働災害も増加しています。厚生労働省の集計では、外国人労働者の労災による死傷者数(死亡または休業4日以上)は、2024年に6,244人となり、初めて6,000人を超えました。注目されるのは、「発生率」も高い点です。労災の発生率を示す「死傷年千人率」は、全労働者平均が2.35であるのに対し、外国人労働者は2.71でした。つまり、単に人数が増えたから事故件数が増えたというだけでなく、外国人労働者は日本人より事故に遭いやすい状況にあるということです。製造業での巻き込まれ事故、建設現場での墜落事故など、重大災害も少なくありません。背景には、言語の壁や経験不足だけでなく、「外国人を雇うことの責任の重み」を十分理解しないまま採用を進める企業側の問題もあります。外国人を雇用する場合、日本人を雇用する以上に重い配慮と責任が求められるにもかかわらず、安い給料で働いてくれるなら外国人でも日本人でも関係ないと、安易な発想で外国人雇用に踏み切る企業も少なくありません。
外国人に働いてもらうというのは、日本人以上に管理する側の負担が大きいことは、雇用する段階ではあまり意識されていない印象を受けます。労働安全衛生法第59条は、事業者に対して安全衛生教育を義務づけており、当然、外構人労働者も例外ではありません。外国人労働者の場合、日本語だけで説明しても十分理解できない場合があり、日本語のマニュアルを渡したりするだけでは不十分です。多言語化、やさしい日本語、図やピクトグラムの活用、反復教育など、通常以上の対応が必要になることも珍しくありません。安全教育は「説明した」という形式ではなく、「理解できたか」が重要です。「立入禁止」「感電注意」「機械停止後に清掃」といった指示を正確に理解できなければ、重大事故につながります。実際、外国人労働者の労災では、機械への巻き込まれや高所からの転落といった深刻な事故が多く発生しています。
万が一、雇用している外国人労働者の事故やトラブルが発生した場合、企業は重大な法的責任を負う可能性があります。労働契約法第5条は、企業に「安全配慮義務」を課しており、外国人労働者であっても当然適用されますし、むしろ日本語能力や知識不足を前提に、より丁寧な配慮が必要になる場面もあります。労災事故が発生すれば、労働基準監督署による調査や是正指導の対象となり、重大事故では労働安全衛生法違反として書類送検される可能性や損害賠償請求を受けることもあります。
それでも、「人が足りないから」という理由だけで外国人雇用を進める企業は少なくないのが現状です。外国人雇用は、単なる採用活動ではありません。安全教育、生活支援、コミュニケーション支援、法令遵守、文化的配慮まで含めた“総合的な責任”を引き受けることを意味します。その責任を負う体制も意思もないまま、「安い労働力」「不足する人手を埋める存在」として外国人を受け入れるのであれば、いずれ事故やトラブルとして問題が表面化します。これからの時代、外国人の雇用はますます拡大していくと考えられますが、外国人雇用を考える雇用主の皆様には、外国人が安全に、安心して働ける環境を整える責任を引き受ける覚悟があるか、雇用を検討する際には一度じっくり考えてほしいと思います。
リバティ総合法律事務所 弁護士 石上秀樹