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「また従業員と揉めているらしい」「退職者が絶えない」――このような会社には、偶然では説明できない共通点があります。労務トラブルは、個別の社員の問題や相性の問題として片付けられがちですが、実務の現場で多くの紛争に関わってきた経験から申し上げると、繰り返しトラブルが起きる会社には、一定の“構造的特徴”があります。本稿では、労務トラブルが慢性化する会社の特徴を、法令の根拠条文とともに整理し、実務上の改善の方向性を解説します。
近年、労務紛争は増加傾向にあります。背景には次のような要因があります。
たとえば、解雇を巡る紛争では「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要とされます(労働契約法第16条)。これは、会社側が「なんとなく問題がある」と感じるだけでは足りず、客観的な証拠と合理的説明が必要であることを意味します。つまり、従来の「社長の判断が絶対」という経営スタイルでは、法的リスクを回避できない時代になっているのです。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出義務があります(労働基準法第89条)。しかし、問題のある会社では、
といったケースが散見されます。
就業規則は「会社のルールブック」です。これが不明確だと、懲戒処分や残業代請求の場面で会社が不利になります。裁判では「ルールが明確であったか」「周知されていたか」が厳しく判断されます。
未払い残業代(いわゆるサービス残業)は最も典型的な紛争類型です。使用者には労働時間を適正に把握する義務があるとされており、これは厚生労働省のガイドラインでも明確化されています。また、時間外労働をさせるには労使協定(いわゆる36協定)が必要であり(労働基準法第36条)、上限規制も存在します。慢性的にトラブルが起きる会社では、
といった問題が見られます。
特に「名ばかり管理職」は最高裁判例でも問題視されています。肩書きだけで残業代を払わない対応は極めて危険です。
解雇は最も高リスクな人事判断です。前述の労働契約法第16条に基づき、合理性・相当性が求められます。トラブルを繰り返す会社では、
といったケースが目立ちます。
退職勧奨はあくまで「合意による退職の提案」であり、強い心理的圧力をかければ違法となる可能性があります。判例上も、執拗な退職強要は不法行為と判断されています。
パワーハラスメントについては、いわゆるパワハラ防止法(労働施策総合推進法第30条の2)により、事業主に防止措置義務が課されています。防止措置とは、
などを意味します。
トラブルが多い会社では、相談窓口が形式的で、実際には機能していないことが少なくありません。その結果、従業員が労働局へ申告し、企業名が公になるケースもあります。
根本的な問題として、人事労務を「費用削減の対象」とのみ捉えている会社は、トラブルを繰り返します。
結果として、初期対応を誤り、小さな火種が大きな紛争へと発展します。
労務トラブルは単に示談金を支払えば済むという問題ではありません。
など、目に見えない損失が蓄積します。特に近年は、インターネット上の口コミサイトの影響力が大きく、紛争体質の会社は採用難に直結します。また、未払い残業代請求の時効は当面の間、3年間(労働基準法第115条、143条3項)であり、過去に遡って高額請求されるリスクがあります。
労務トラブルが繰り返される会社の特徴は、次の三点に集約されます。
これは従業員の質の問題ではなく、「組織設計」の問題です。企業が取るべき対応は、
といった予防的措置です。労務管理は「トラブルが起きてから対応する分野」ではありません。むしろ、平時の整備こそが最大のリスク対策です。繰り返される紛争は、必ずどこかに構造的な原因があります。経営者・人事担当者は、目の前の個別案件だけでなく、自社の労務管理体制そのものを点検することが重要です。それが、安定した組織運営と持続的成長への第一歩となります。
従業員とのトラブルが他の会社と比較して多く、自社の労務管理には構造的な問題があるのではないかと気になる場合は、いつでも弊所までご相談ください。法律相談だけでしたら、30分あたり5,000円(税抜)で対応させていただきます。