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新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、テレワーク(在宅勤務)は急速に普及しました。現在では一時的な措置ではなく、恒常的な働き方として定着しています。一方で、テレワークを導入した企業からは、「勤怠管理がうまくいかない」「残業代をめぐって従業員と揉めている」といった相談が後を絶ちません。
テレワークであっても、労働時間規制や残業代支払いの原則は変わりません。むしろ、目が届かないからこそ、法的トラブルが表面化しやすいのが実情です。
テレワークでは、上司が従業員の勤務状況を直接確認できません。その結果、
といった状況が生まれます。しかし、労働基準法第32条は、使用者に対し労働時間を適切に把握・管理する義務があることを前提としています。「在宅だから分からない」「本人に任せている」という言い訳は、法的には通用しません。
まず押さえておきたいのが、残業代支払いの大原則です。
また、厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」でも、
客観的な方法による労働時間把握(PCログ、勤怠システム等)の重要性が明示されています。
テレワーク導入後、会社は「自己申告制」で始業・終業時刻を報告させていました。しかし実際には、上司からのメール・チャット対応が夜間にも及び、従業員は申告せずに対応。退職後、「実際には毎月20時間以上残業していた」として未払い残業代を請求されました。
この点、「使用者が業務上必要な連絡を時間外に行っていた場合、黙認残業として労働時間に該当する」と判断されるケースは少なくありません。「申告がなかった=労働時間ではない」とはならない点が重要です。
このケースでは、会社は「PCのログイン・ログオフ時間」をそのまま労働時間として管理していました。ところが、従業員は業務終了後もPCを落とさず、私的利用をしていたことが判明。一方で会社は「ログがある以上、残業代を払わないといけないのか」と混乱しました。
この点、PCログはあくまで労働時間推認の一資料にすぎません。重要なのは、「その時間に業務を行っていたか」「業務指示・業務上の必要性があったか」です。逆に言えば、業務実態を確認せず一律に否定することも危険です。
テレワーク中、従業員が私用で中抜けすることを黙認していました。しかし業務量は減らず、結果として深夜まで作業。会社は「自由に中抜けしているのだから残業ではない」と主張しました。しかし、中抜け時間を明確に勤怠上処理していない場合、全体として長時間労働が常態化していれば、残業と評価される可能性が高いです。
テレワーク下でのトラブルを防ぐためには、次の点が不可欠です。
特に、「テレワーク=裁量的」という誤解を是正することが重要です。
テレワークは柔軟な働き方を可能にする一方で、勤怠管理・残業代計算という労務の基本を曖昧にすると、紛争リスクが一気に高まります。見えないからこそ、ルールと記録が重要です。
「性善説」ではなく、「説明できる管理体制」を整えることが、企業と従業員双方を守る最大のポイントといえるでしょう。
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