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2026/02/05
その他(労務関連)

副業をしている社員との間のトラブルが増えていると聞いています。社員に副業を許可している会社がトラブル防止のために抑えておくべきポイントを教えてください。





近年、政府の働き方改革の流れもあり、副業・兼業を認める企業が増えています。一方で、副業を始めた社員が本業に支障をきたしている」「競合他社で副業をしていた」「副業先でのトラブルに会社名が巻き込まれた」など、企業と社員の間のトラブルも確実に増加しています。副業は社員のスキルアップやモチベーション向上につながる可能性がある一方、制度設計を誤ると、企業にとって大きなリスクにもなり得ます。









まず確認しておきたいのは、日本の法律上、「副業を原則禁止しなければならない」という規定は存在しない点です。むしろ、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」では、従来の副業禁止規定が見直され、「原則として副業・兼業を認める」との方向性が示されています。
もっとも、これはあくまで行政のガイドラインであり、すべての企業が無条件に副業を認めなければならないわけではありません。企業は、事業運営上の必要性やリスクを踏まえ、一定の制限を設けることが可能です。









副業に関するトラブルを考えるうえで重要なのが、労働契約に付随する「誠実義務」や「職務専念義務」です。判例上、労働者は、労働契約に基づき、会社の業務に誠実に従事すべき義務を負うとされています。そのため、副業が原因で本業に支障が出る場合や、会社の利益を害する場合には、一定の制限や懲戒の対象となる可能性があります。

また、競業避止の観点も重要です。例えば、自社と競合する企業で副業を行うことは、営業秘密の漏えいや利益相反につながるおそれがあります。この点については、「不正競争防止法」や、就業規則・誓約書による秘密保持義務の定めが実務上の根拠となります。

さらに、長時間労働の問題も見逃せません。労働基準法第38条は、複数の事業場で働く場合の労働時間通算を定めています。副業先での労働時間も通算されるため、結果として法定労働時間や時間外労働の上限規制を超えてしまうリスクがあります。









副業トラブルを防止するため、企業が実務上押さえておくべきポイントは次のとおりです。

第一に、「副業ルールの明確化」です。副業を認める場合でも、無制限に認めるのではなく、①事前申請制とする、②競業行為や会社の信用を害する副業は禁止する、③本業に支障が出た場合は中止を命じることがある、などのルールを就業規則に明記することが重要です。

第二に、「情報管理と秘密保持」です。副業先での業務内容によっては、自社の営業秘密と接点を持つ可能性があります。秘密情報の範囲や取扱いを明確にし、必要に応じて誓約書を取得することで、後日の紛争を防ぎやすくなります。

第三に、「労働時間の把握」です。副業を許可する以上、会社としても社員の副業状況を一定程度把握し、過重労働にならないよう注意喚起を行う必要があります。健康配慮義務の観点からも、完全に放置することは望ましくありません。

第四に、「懲戒との関係の整理」です。副業ルールに違反した場合、直ちに重い懲戒処分が認められるとは限りません。過去の判例でも、違反の程度や会社への影響を総合的に考慮する必要があるとされています。懲戒事由と処分内容のバランスを就業規則上整理しておくことが重要です。









副業を認めること自体は、時代の流れに沿った前向きな施策といえます。しかし、制度設計を曖昧にしたまま運用すると、企業・社員双方にとって不幸な結果を招きかねません。重要なのは、「副業を認めるか否か」ではなく、「どのような条件で、どこまで認めるのか」を法律と実務の両面から整理することです。就業規則の整備、社員への丁寧な説明、そして運用状況の定期的な見直しが、トラブル防止の最大の鍵となるでしょう。副業解禁時代だからこそ、企業には一段と丁寧な労務管理が求められています。今一度、自社の副業ルールが実態に合っているか、点検してみてはいかがでしょうか。



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