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3年間などの有期労働契約を結んでいる場合、期間途中での退職には慎重さが求められます。特に、より良い条件の会社からスカウトされたものの、現職の会社から強く引き留められた場合、「それでも退職を強行してよいのか」「違法にならないのか」と不安に感じる方は少なくありません。本稿では、この点を法律の原則と実務の視点から解説します。
1.有期労働契約は「期間を守る」契約
労働契約には、大きく分けて無期労働契約と有期労働契約があります。無期契約の場合は、民法627条により、原則として2週間前に申し出れば退職が可能です。これに対し、有期労働契約は「一定期間働くこと」を前提に締結される契約であり、法律上も途中解約は例外的とされています。この点を理解せずに行動すると、思わぬトラブルに発展するおそれがあります。
2.会社が反対している場合の評価
(1)「やむを得ない事由」があるか
有期労働契約の途中退職について定めているのが、民法628条です。同条は、「やむを得ない事由」がある場合には、労働者は直ちに契約を解除できるとしています。ここでいう「やむを得ない事由」とは、簡単に言えば、契約期間中の就労継続が客観的に見て困難、または不合理な事情を指します。
判例や実務では、次のような事情が典型例とされています。
(2)スカウト・転職は「やむを得ない事由」か
結論から言えば、より条件の良い会社からスカウトされたこと自体は、通常「やむを得ない事由」には該当しません。裁判例でも、キャリアアップや収入増を理由とする途中退職は、労働者の個人的事情と評価される傾向にあります。そのため、会社が反対している状況で一方的に退職を強行すると、民法628条後段に基づく損害賠償請求の対象となる可能性があります。
3.労働契約法137条との関係
一方で、労働基準法137条は、次のように定めています。
労働基準法137条
期間の定めのある労働契約(一定の場合を除く)について、契約期間の初日から1年を経過した日以後においては、労働者はいつでも退職することができる。
この条文は、有期労働契約について、「1年以上も労働者を契約に縛り付けるのは酷である」
という考え方から設けられた労働者保護規定です。
つまり、
という二段構造になっています。
4.「会社が反対しても辞められる」のか
労基法137条が適用される場合、会社の同意は不要です。
したがって、質問のあった事例のように、3年間の有期雇用契約で、契約開始からすでに1年を経過していれば、会社が反対しても、労働者は一方的に退職できます。この場合、労働者は、「やむを得ない事由」を説明する必要もなく、スカウトやキャリアアップが理由でも問題ありません。ここが、民法628条との決定的な違いです。
5.損害賠償との関係
実務上よく誤解されますが、労基法137条に基づく退職について、損害賠償請求は原則できません。
理由はシンプルで、
からです。裁判実務でも、137条による適法な退職について、会社側の損害賠償請求が認められる可能性は極めて低いと理解されています。
6.注意すべきこと
もっとも、次の点には注意が必要です。
また、実務的には