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労働トラブルが起きたとき、「これは労働基準監督署に相談できるのか」という判断に迷う場面は少なくありません。その判断のカギとなるのが、労働基準監督署がどの法律を担当しているのかという点です。
労基署は「労働に関することなら何でも扱う機関」ではなく、担当する法律が明確に限定された監督機関です。
労働基準監督署は、厚生労働省の地方機関として、事業主に労働関係法令を守らせることを目的とする行政機関です。その権限の中核は、
といった「監督・取締り」機能にあります(労働基準法第101条)。
労基署が最も中心的に扱うのが労働基準法です。
② 最低賃金法
最低賃金法第4条により、最低賃金未満の賃金支払いは禁止されています。
③ 労働安全衛生法
労働者の安全と健康を守るための法律で、長時間労働や労災防止に深く関係します。
④ 労働者災害補償保険法(労災保険法)
労基署は、労災保険の給付手続の窓口でもあります。
ただし、会社の民事上の損害賠償責任の有無を判断する機関ではありません。
⑤ 作業環境測定法・じん肺法など
業種によっては、以下のような専門的な労働安全関連法令も所管します。
主に製造業・建設業などで問題となる分野です。
重要なのは、労基署が扱わない法律も多いという点です。
例えば、
これらは、原則として
実務では、次の視点で切り分けると分かりやすくなります。
「これは労基法違反か?」と考えることが、最初の分岐点です。
労働基準監督署が対応するのは、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労災保険法を中心とした“最低基準を守らせる法律です。労基署は万能の相談機関ではありませんが、明確な法令違反に対しては強力な権限を持つ機関です。相談先を誤らないためにも、「どの法律の問題なのか」を意識することが、労務トラブル対応の第一歩と言えるでしょう。