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2025/12/19
その他(労務関連)

会社との間でトラブルが発生したとき、よく労基署に相談に行ったらよいと言われますが、一方で、労基署が対応できることは限られているから、弁護士等、他の相談窓口に行った方がよいとアドバイスを受けることもあります。労基署が対応してくれるトラブルってどういったものなのか、教えてほしいです。



はじめに



労働トラブルが起きたとき、「これは労働基準監督署に相談できるのか」という判断に迷う場面は少なくありません。その判断のカギとなるのが、労働基準監督署がどの法律を担当しているのかという点です。
労基署は「労働に関することなら何でも扱う機関」ではなく、担当する法律が明確に限定された監督機関です。



背景:労働基準監督署の役割



労働基準監督署は、厚生労働省の地方機関として、事業主に労働関係法令を守らせることを目的とする行政機関です。その権限の中核は、 


  • 立入調査
  • 是正勧告
  • 悪質事案の送検



といった「監督・取締り」機能にあります(労働基準法第101条)。



労働基準監督署が対応する主な法律



労基署が最も中心的に扱うのが労働基準法です。

  • 法定労働時間・休憩・休日(第32条・第34条・第35条)
  • 時間外・休日労働(第36条)
  • 割増賃金(第37条)
  • 賃金の支払方法(第24条)
  • 解雇予告・解雇予告手当(第20条)



    いわゆる「最低限守るべき労働条件」に関する法律であり、未払い残業代などの相談はここに該当します。



最低賃金法第4条により、最低賃金未満の賃金支払いは禁止されています。

  • 地域別最低賃金
  • 特定最低賃金

    のいずれについても、違反があれば労基署が調査・是正指導を行います。



労働者の安全と健康を守るための法律で、長時間労働や労災防止に深く関係します。

  • 健康診断の実施
  • 安全配慮体制
  • 危険作業の管理
  • 過重労働対策


    重大事故や過労死事案では、労基署が中心となって調査を行います。



労基署は、労災保険の給付手続の窓口でもあります。

  • 業務災害・通勤災害の認定
  • 療養補償給付・休業補償給付


ただし、会社の民事上の損害賠償責任の有無を判断する機関ではありません。

業種によっては、以下のような専門的な労働安全関連法令も所管します。

  • 作業環境測定法
  • じん肺法
  • 石綿障害予防規則(安衛法関連)

主に製造業・建設業などで問題となる分野です。




労働基準監督署が「対応しない」法律




重要なのは、労基署が扱わない法律も多いという点です。


例えば、

  • 労働契約法(解雇の有効・無効)
  • 労働施策総合推進法(パワハラ防止措置)
  • 男女雇用機会均等法(セクハラ・差別)
  • 育児・介護休業法



これらは、原則として

  • 雇用環境・均等部(室)
  • 総合労働相談コーナー
    の所管となります。



実務的な判断ポイント



実務では、次の視点で切り分けると分かりやすくなります。

  • 賃金・労働時間・安全 → 労基署
  • ハラスメント・均等・育休 → 雇用環境・均等部
  • 解雇の妥当性・評価 → 総合労働相談コーナー

「これは労基法違反か?」と考えることが、最初の分岐点です。



まとめ



労働基準監督署が対応するのは、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労災保険法を中心とした“最低基準を守らせる法律です。労基署は万能の相談機関ではありませんが、明確な法令違反に対しては強力な権限を持つ機関です。相談先を誤らないためにも、「どの法律の問題なのか」を意識することが、労務トラブル対応の第一歩と言えるでしょう。

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