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2025/12/18
賃金・労働時間

非違行為を行った従業員に対し、懲戒処分の一つとしての減給処分をすることを検討しています。どの程度の減給であれば後で問題をされないか教えてください。




1.はじめに



従業員が社内規律に反する行為(非違行為)を行った場合、企業としては何らかの懲戒処分を検討することになります。その中でも「減給処分」は比較的軽い処分として用いられますが、減給には法律上の厳格な上限が定められており、これを超えると違法となる点に注意が必要です。



2.背景:なぜ減給処分が問題になりやすいのか



減給処分は、労働者の生活に直接影響を与えるため、使用者の裁量が強く制限されています。
特に、感情的・制裁的に高額な減給を行った場合、労働基準法違反懲戒権の濫用として、後に紛争化するケースが少なくありません。




3.法律の内容:減給処分の法的上限



(1)労働基準法第91条



減給処分については、労働基準法第91条が明確な上限を定めています。

使用者が就業規則により労働者に対して減給の制裁をする場合においては、
その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、
総額が一賃金支払期における賃金総額の十分の一を超えてはならない。



これを分かりやすく言い換えると、次の二重の制限があります。

  • 1回の減給額:平均賃金1日分の「半額」まで
  • 月全体の減給総額:その月の賃金総額の「10%」まで

このどちらか一方でも超えると違法となります。

1回あたりの減給額は、平均賃金1日分の「半額」までなので、1回の事案に対して、平均賃金の半額を複数日にわたって減額することは許されません。

例えば、2個の懲戒事由に該当する行為がある場合は、その2個の行為についてそれぞれ平均賃金の1日分の半額を言及することは問題ありません。ただし、合計の減額総額が、上記の②の要件「その月の賃金総額の10%」を超えることは許されません。



(2)「平均賃金」とは



平均賃金とは、原則として直近3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数で割った金額をいいます(労働基準法第12条)。
月給制の従業員でも、必ずこの計算が必要です。



4.判例・実務上の取扱い



裁判例でも、労働基準法第91条を超える減給は当然に無効と判断されています(大地判 平成22・5・14)。


また実務上は、

  • 就業規則に減給処分の定めがない場合
  • 非違行為の内容に比べて減給額が重すぎる場合



には、たとえ91条の範囲内であっても、**懲戒権の濫用(労働契約法第15条)として無効とされるリスクがあります。



5.実務的な影響と注意点



実務では、次の点を押さえることが重要です。

  1. 就業規則に明確な根拠規定があるか
  2. 非違行為の内容・回数・影響の大きさとのバランスが取れているか
  3. 減給以外の処分(戒告、出勤停止等)との選択の合理性
  4. 法定上限ギリギリではなく、相当程度抑えた金額にしているか

特に初回の非違行為である場合、上限いっぱいの減給は「重すぎる」と評価されやすいため注意が必要です。



6.まとめ



減給処分について「後で問題にならない」ためには、次の点が重要です。

  • 労働基準法第91条の
    ①1回=平均賃金1日分の半額まで
    ②月総額=賃金総額の10%まで
    を必ず守ること
  • 就業規則に根拠規定を置くこと
  • 行為の内容に見合った相当性を確保すること


減給処分は手軽に見えて、法的リスクの高い処分でもあります。実際に処分を行う際は、事前に専門家へ相談することが、結果的に紛争予防につながると言えるでしょう。

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