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前回、労働時間に関する規制に関係なく働けるだけ働きたいという人は、個人事業主やフリーランス、企業家という選択もあるというお話をしました。今回は、個人事業主やフリーランスを保護する法制についてお話しします。
ちなみに、個人事業主とフリーランスは、よく似た意味で使われることが多いですが、以下のとおり、法律的・税務的な定義や使われる文脈によって違いがあります。
■ 個人事業主
■ フリーランス
個人事業主やフリーランスは、雇用契約に基づかない働き方であるため、労働基準法などの労働者保護法が原則として適用されません。
しかし、近年はフリーランス等の増加を背景に、一定の法的保護が整備されつつあり、以下のとおり、独占禁止法、下請法及びフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)等による保護が図られています。
(細かい話にはなりますが、フリーランス新法と独占禁止法のいずれにも違反する行為については、原則として、フリーランス新法を優先して適用、また、フリーランス新法と下請法のいずれにも違反する行為についても、原則として、フリーランス新法を優先して適用、下請法と独占禁止法のいずれにも違反する行為については、原則として、下請法を優先して適用するとされています。)
(1)下請法(下請代金支払遅延等防止法)
親事業者(発注者)が、下請事業者(フリーランス等)に不当な取引を行うことを禁止する法律です。親事業者には、次の11項目の禁止事項が課せられています。

(出典:公正取引委員会「下請法の概要」)
なお、令和7年5月16日、「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が国会において可決・成立し、令和8年1月1日に施行予定となっています。それにより、法律名も、「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」へ変更されます。変更された具体的な内容については、別途、下請法改正に関する各種記事・文献等をご参照ください。
(2)フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
2024年11月1日に全面施行された新しい法律で、いわゆる「フリーランス保護法」と呼ばれています。働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的としています。
「取引の適正化」 と「就業環境の整備」の2つのパートで構成されていて、適用される義務と禁止行為は次のとおりです。

(出典:内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)パンフレット」)
違反事業者は、厚生労働省・公正取引委員会の報告徴収・指導・勧告・公表等の対象となり、この法律により、従来「保護の空白地帯」とされてきたフリーランスの地位が大きく改善されました。
(3)独占禁止法
立場の弱い個人事業主・フリーランスに対して、発注事業者が、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、公正な競争を阻害するおそれがあることから、不公正な取引方法の一つである優越的地位の濫用として、独占禁止法により規制されます。どのような場合に公正な競争を阻害するおそれがあると認められるのかについては、問題となる不利益の程度、行為の広がり等を考慮して、個別の事案ごとに判断されます。
どのような場合に優越的地位の濫用として問題となるのかについては、ここでは割愛します。
(4)労災保険の特別加入制度
令和6年11月1日から、企業等から業務委託を受けているフリーランスの方(特定フリーランス事業)について業種・職種を問わず特別加入することができるようになりました。

(出典:厚生労働省「フリーランスの皆様へ※特定受託事業に従事する方」)